暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
[4/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 そう。彼の神族に共通する予言の言葉。『やがて星々の位置が正しい位置に戻る時、古き神々は力を取り戻すだろう』……と言う言葉と、先ほど青年が語り、俺の知識が補完した内容とが奇妙な符合を示しましたから。
 所謂、星辰が揃う、……と言う風に言い表される日。しかし、未だかつてそんな日が訪れた事は、俺の知って居る限りでは一度しかなかった夜。
 長い人類の歴史の中でもたった一度だけしか存在しない日の事。

 何故ならば、すべての条件が整ったとしても、今夜この場所に俺とタバサが現れたように、今までも見知らぬ誰かの手に因って未然に防がれて来たのです。
 彼の神族の関係者が口にする『星辰が揃う』と言う夜は。

 世界自体が滅びを回避する為に用意する最後の防衛機構たちの手に因って……。

 そして当然のように、そのヤツラの企みの阻止に失敗したたった一度とは、その世界の終りの始まりへと進み始めた日と成りましたが……。
 それは有り得ない話。俺の住んで居た地球世界に伝わる御伽話。
 ただ、平行世界にこうやって俺自身が召喚された以上、その御伽話。世界は一度、一人の少女の手に因って滅び、二人の女性に因って産み落とされた、などと言う荒唐無稽な話も、かなりの現実味を帯びて来たのは間違いないのですが。

 その御伽話の内容……出来事自体が、何処かの段階で枝分かれをした平行世界の出来事だと仮定したのならば。

 もっとも、そんな事よりも、更に驚愕の事実をさらっと口にしましたね、このナナシさんは。
 その驚愕の事実と言うのは、

「オマエ、さらっと俺のファースト・ネームを口にしたな」

 俺の通称を口にしたナナシの権兵衛に対して、それまでよりも少し強い口調でそう問い掛けた。
 それもヤツの口から発せられたのは漢字表記の忍と言う名前。この世界にやって来てから呼ばれて居たカタカナ表記のシノブではない響きを、俺の耳……正確には脳が受け取っていたのです。
 おそらくは相変わらず、相手の見た目からそう聞こえたような気がし――――

 ――ただけ。そう考え始めた俺の記憶の中に発生する微かな違和感。
 確かに、漢字表記で忍と呼び掛けて来たように感じた相手は、ティターニアとこの目の前のナナシの権兵衛さんだけですが、見た目が日本人に見える人物ならば俺はもう一人知って居ます。
 それは魔法学院のメイドのシエスタ。彼女も見た目は日本人ですが、彼女からの呼び掛けはシノブさんで有って、決して忍さんでは有りませんでした。

 俺は少し余計に霊力を籠めて、このナナシの権兵衛を見つめる。
 コイツは、何らかの召喚魔法に因って、俺と同じように地球世界の日本から召喚された存在ではないか、そう思い始めて居ましたから。
 もっとも、武神忍の名前は自称。当然のように本
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ