第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
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れている土地だっていう事を」
遙か彼方。闇の向こう側から聞こえて来る声。
その声が、単調なフルートの音色に乗ってまるで夢幻の世界に誘うかのうように、正常な思考を奪い去って行く。
しかし、ヴァリャーグ。……確か、地球世界に於いてヴァリャーグと呼ばれているのはノルマン人。スェーデン・バイキングの事を指している言葉だったと記憶しているのですが。
そして、同時通訳技能で頭の中に響いたのはその事を裏付ける言葉。フランス辺りから考えると向こう岸と言うのはスカンジナビア半島の事で有り、それにノルマンディー辺りに王朝を開いたのもこのヴァリャーグと呼ばれた連中の一派だったはずなのですが……。
但し、それは飽くまでも地球世界の話。まして、ナナシはそのヴァリャーグと呼ばれている存在がこの地に封じられていると言いました。
これは一体……。
「封じた場所を護るかのように森を造り上げ、そして、邪気を帯びた大地から天に向けて少しずつその邪気を吸い上げ、大気中に散じさせる為に太古の森を造った。その森の番人が、この地に暮らす翼人たちだった、と言う事だ」
俺の疑問を他所に続くナナシの言葉。それはおそらくタバサ。いや、それドコロか、この任務を命令して来たイザベラ。つまり、ガリア王家さえも知らないで有ろう内容。
もしかすると、かつての……。簒奪される前の正統なるガリア王家の嫡子にならば伝えられていたかも知れない真実。
「いや、忍にはこう言った方が通じ易いか。ここは日本の鞍馬山。翼人は西洋版の天狗どもだ」
鞍馬山に天狗!
その瞬間、それまで俺が描いていた西洋風ファンタジー世界の色が吹き飛び、行き成り東洋風伝奇小説の内容が俺の頭の中に浮かんだ。
そう。ここが鞍馬山と同じ意味で魔物を封じ、その魔物を封じた場所を天狗ならぬ、翼人が護って居たと仮定するのなら……。
それに、確か鞍馬山に封じられている神も金星からやって来た星神だと伝えられていたはずですから……。
「そのままの状態では流石の俺も手出し出来なかったから、人間どもに多くの木を切らせ、森を開かせたのさ」
まして、ブリミル教の御蔭で精霊に対する信仰を失い、翼人も悪魔扱いと成っていたから、更に仕事はやり易くなって居たのも幸いだったな。
かなりの嘲りの色を籠めたナナシの言葉が、闇の奥から投げつけられて来たのだった。
この事件も同じ。いや、このハルケギニア世界に俺が召喚されてから経験して来た事件の内の多くは、ブリミル教と言う一神教の教えに因って大地や精霊と人間の絆が失われた結果に因り発生した事件でしたか。
これは、俺の暮らして来た地球世界ならば異常気象や天変地異と言う形で表現されるべき事案が、ここハルケギニア世界が西洋風のファンタジー世界で有るが
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