暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
[11/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
燥、骨の露出を起こすと言われている。
 しかし、断末魔の黄色い光を放った次の瞬間にそれは、黄色い巨大な生命体。黄金の冠を戴いたラクダへと姿を変え、
 そして最後には、腰に王冠をたずさえた、流れるような滑らかな紅き長い髪の毛を持つ貴婦人の姿へと変わって行った。

「玉虫色の球体からラクダへと姿を変え、最後は王冠を腰にたずさえた赤毛の貴婦人。門にして鍵の使い魔で有り、第一の球体ゴモリか!」

 その赤い見事な髪の毛と同じ色の液体で、黒のベルベットと白のヴェールを染め上げて行く貴婦人。
 但し、大地に倒れ込んだ赤毛の貴婦人はピクリと動く事もなく……。

「だから最初から言って居るだろうが」

 何処か遠くから。目の前に居る青年から聞こえて来ているはずの声なのですが、何故か何処か遠くから聞こえて来る声のように感じて居るこの声。
 いや、間違いない。明らかにヤツ……ナナシの権兵衛が纏って居る闇が濃く成って来ている。

 これは――――

 何時の間に現われたので有ろうか。亀裂の向こう側から現れた十二の球体がゆっくりと俺たちの周囲を反時計回りに回転し始める。
 まるで夢幻の中を舞うメリーゴーランドのように……。

 そうして、

 ゆらゆらと揺れながら灯るそれは、呪われた書物に記載される如く七色の光りを世界に与えて行く。
 そう。空間自体に虹色の軌跡を刻みながら、世界を冒涜し始めたのだ。

 その時、既に世界は更に一歩分だけ向こう側の世界へと近付いて居た……。

 それまでは確かに、森の中にぽっかりと空いた丸い空間から、妙に歪んだあまり見覚えのない、しかし、確かに通常の明け方近くの蒼穹が見えて居たはずの場所には、白色や黄色に輝く星々の姿を探す事は出来ず、変わりに毒々しいまでの桃色や緑色がまるで安物のミラーボールの如く……。いや、地上、こちら側の世界で回転し続けるヨグ・ソトースの球体の如く、一瞬一瞬ごとにその色と瞬きを変化させていた。
 そう。ここは既に異界。夢幻に広がる空間のようで有り、同時に確固とした現実世界の中に存在する空間のようにも思える場所。

 蒼穹と自分。自分とタバサ。自分とナナシ。彼らが傍に居るのにも関わらず、すべてに対してまるで距離感を掴む事は出来ず、大地をしっかりと踏みしめて居るはずなのに平衡感覚すらもあやふや。

 何処からともなく聞こえて来る単調なフルートの音色に導かれるように、ゆっくりと世界を巡る七色の光の球体(たま)。それぞれがそれぞれに向けて糸のような、てらてらと不気味に光る粘着質の物質により形成された糸のような物で繋がり……。

「知って居るか。この辺りには遙かな昔に蒼穹の彼方から飛来した存在。後の歴史ではヴァリャーグ(向こう岸からの来訪者)と呼ばれている何モノかが封じら
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ