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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
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「なんだ、またお前らか」

 殺戮の現場となった広場の片隅。正面の一番奥に存在する、付近の建物の中では一番大きな木造の建物の辺りから投げ掛けられる若い男性の声。
 但し、その声の中に漂うこの常軌を逸した殺戮の現場には相応しくない、少し……。いや、かなりやる気を感じさせない気だるい響き。

「オマエは?」

 その声を掛けて来た方向に視線を転じながら、そう問い返す俺。
 ただ、その男声自体から記憶の片隅に有る何かを呼び覚ます……、思い出せそうで、思い出せないようなもどかしさを感じる。何と言うか、以前に何処かで聞いた事が有る声のような気もするのですが……。

 其処。建物の影から姿を現し、俺たちの立つ翼人のコミュニティの入り口辺りから大体、二十メートルほど向こう側に立ち止まった存在とは……。

 まるで蟠った闇を纏うかのように、月明かりの下に立つ若い男性。
 見た雰囲気から言うと、身長は俺よりも少し低いぐらい。年齢的には俺と多分、同じ程度。少し明度が低いのが理由で判り難いだけ、だとは思いたいのですが、黒髪で黒い瞳をしていると思います。
 容姿に関しては多分十人並み。俺が元々暮らして居た現代の日本でならば、街へと出かけて行けば……。いや、おそらくクラスに一人や二人は存在している、あまり目立つ事のない少年から青年へと変わる狭間の存在。服装に関しては、濃い緑色のブレザーに白のシャツ。そして、ワインレッドのタイ。スラックスは黒。もしかすると本当に、日本の高校の男子生徒が、俺と同じようにこのハルケギニア世界に使い魔として召喚された存在かも知れない。
 そう思わせる容姿と服装。
 その両手に革製のオープンフィンガーグローブと言うタイプの、指先を露出した形の手袋をしている点のみが、暗がりに立つ青年の特徴と言えば特徴でしょうか。

 ただ……。
 ただ、そんな何処からどう見ても普通の目立たない青年が、こんな殺戮の現場に現れる訳は有りません。
 まして、周囲に散乱している元翼人たちを殺害したのが彼ならば、その彼が地球世界出身の普通の高校生などと言う事はないでしょう。
 その証拠に、暗視の魔法で普段よりも暗い森の中でも問題なく戦闘を行い、更にそれ以後は、ほぼ全速力で暗闇に包まれた森の中を駆け抜けて来ても、一度もつまずく事すらなかった俺の瞳に、何故か、この新たに現われた青年の姿をきっちりと捉える事が出来ないで居たのですから。
 これは、明らかに何らかの魔術が行使されて居て、この目の前の青年の姿を認識出来ないようにされて居ると言う事。そんな存在が一般人の訳は有りません。

「おいおい、人に名前を聞く時は、先ずは自分の方から名乗るのが礼儀じゃなかったかな」

 かなりやる気を感じさせない言葉ながらも、それでも、ある程度は常識的な答えを返
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