暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Last Mission アルケスティス
(3) マクスバード/リーゼ港 A
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ちで何とかしろよ。一度やったことあるなら今度もできるだろ? そう思うから今駆けずり回ってんだろ? 何の権利があって俺のたった一人の兄貴を奪ってくんだ。死んだり殺したり……もう、ウンザリだよ。俺にだってなあ、踏み躙られたら痛いココロはあるし、失くしたくない人だっているんだよ!」

 肺の空気を使えるだけ使って叫んだ。酸欠に喘ぐ余裕はない。ルドガーは頭を高速で回転させる。

 彼ら全員を退けてユリウスを守ることは可能か――
 可能ではある。誇張でなく、今日までの任務やクエストでルドガーの実力は彼らを上回っている。8人全員を同時に相手しても殺せる。

 だが、敵方にはリーゼ・マクシアの王と宰相、気鋭の源霊匣(オリジン)研究者がいる。この3人を殺せば、世界が生き永らえても両国は戦争になりかねない。だが、一人でも生かせば確実に彼らは実行する。

 ユリウスを連れて逃げるか。ダメだ。ユリウスにはすでに走れるだけの体力が残っていない。

 何も浮かばない。ルドガーもまたジュードたちのように心を諦めに支配されていく。どうしようもないから諦めろ、諦めて殺せ。でなければ生き延びられないぞ、と。

(あきらめて、ころす)

 次の瞬間のひらめきは、まさに天啓だった。

(あきらめるのは、どっちを?)


 ――“殺すの。ルドガーとか、ユリウスとか、強い骸殻能力者を”――


 なんだ、とルドガーは口の端を歪めた。とっくに解答は示されていたのだ。

 ルドガーはユリウスから離れ、ユリウスとも仲間たちとも距離を取った。両サイドから中間に当たる位置に立つ。

「俺が最初の頃の、言いなり人形のままだと思うなよ」

 ホルスターの片方から銃を抜いた。戦う気か、とジュードたちも身構える。
 どんなに格好つけても、これがルドガー・ウィル・クルスニクの限界。勝手に挑んで勝手に挫けたピエロの末路。来るべくして訪れた、似合いのピリオド。

 死ぬのが怖かった。死なないためなら他人を殺してやるとついさっきまで本気で思っていた。なのに今はただ、彼らに思い知らせたい。世界のためを謳ってルドガーをいいように操ろうとしたカレラに。ルドガーが何か失敗するたびに「やっぱり」と上から嘆き続けた兄に。

 ルドガー・ウィル・クルスニクの命を使って思い知らせてやりたい。

 銃を自らのこめかみに押しつけた。息を呑むジュードたち。青ざめるユリウス。何てすかっとした気分。

「みんなが、悪いんだからな」

 ただ一人の家族を知らない所で殺される辛さ。友だと信じた人たちが隠れて実行する悲しさ。家族である人に欠片も頼られない寂しさ。誰ひとり本当の味方でも理解者でもなかったと思い知らされた、絶望感。ここにいる誰も、分からなかった。想像もしてくれなか
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