表彰式
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黒々とした怒りの表情を浮かべれば、ウィリアムもフォークの後ろに続いた。
そんな背に、実に冷ややかに、冷やかに。
「御機嫌よう、先輩方」
+ + +
フォークと三学年の主席が怒りを浮かべながら、出ていくのが見えた。
遠く離れた場所からでは声は聞こえなかったが、とても穏やかに終わったとは思えない。
相手を宥めるのではなく、徹底的に論破する。
優秀ではあるが、おそらくは表には出てこれないだろう。
原作で名前すらも聞かなかった理由が、アレスには理解が出来た。
もう少し落ち着いてくれるといいのだけれど。
そう思っていれば、テイスティアが実に困ったような顔をしてこちらを見ている。
何とかしてくれと、頼る。
そこは変わらないテイスティアの姿にアレスは笑い、無視をした。
自らのチームの方を見れば、相手の強さやこれまでの戦いの話に花を咲かせている。
一様に嬉しそうな姿に、微笑めば、こちらの視線に気づいたフレデリカが振り返った。
「おめでとうございます。マクワイルド先輩」
「ああ、ありがとう。君たちの力だ」
「でも、良かったです」
小さく笑う姿に、どこかほっとした様子が混じっている。
「何が?」
「アレス先輩に初めて敗北をつける事にならなくて」
「今回は四連覇もかかってましたしね」
同意するようにサミュールが頷けば、周囲も口々にほっとして息を漏らした。
「別に気にする事はないけどな」
「こっちが気にするんですよ」
どことなく恨みがましく見られれば、アレスは苦笑する。
しかし、別段無敗や四連覇にこだわったことはない。
戦術シミュレートで強くても、実戦で勝てるわけでもない。
それに――実際は三年前に敗北しているしな。
困ったように髪をかけば、アレスは目を見開いた。
「しまった」
呟かれた言葉に、何かあったのかとざわめいた。
何かあったのだろうかと、慎重にサミュールが問いかける。
「どうかしましたか、先輩?」
「かけてない」
「は……?」
「今回、自分のチームに賭けるの忘れていた。負けを取り返すチャンスが!」
言葉に周囲が顔を見合わせた。
そして、盛大に笑い声をあげる。
「笑い事じゃねぇぞ」
肩を落としながら、アレス・マクワイルドは大きく息を吐いた。
せめて、フェーガンにおごってもらわなければ、割に合わないと。
アレス・マクワイルド――士官学校戦術シミュレート大会無敗。
しかし、戦術シミュカルチョの成績は負け越しであった。
+ + +
表彰式の準備が終わり、アレス達が表彰会場に姿を見せたのは、決勝戦終了から一時間後のことであった。
仰々しい様子にアレスのチームメイトは緊張した
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