表彰式
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があった。
厳しい視線を向けられても、ライナは微動だにしない。
「単に戦術的な戦いであれば、相手のセラン・サミュールは四学年でもトップレベル。それも同数であれば、容易に相手を崩すことは難しいかと」
「ふざけるな。私や貴様も相手を崩すことはできていた。こいつだけが」
「私が崩すことができたのは、グリーンヒル候補生がまだ戦術に慣れていなかったからです。フォーク総司令官が相手を崩せたのは、敵の艦数差かと思慮いたします」
「そんなものは考慮に値しない。現実に出来るものがいて、こいつはできなかった。戦闘とは結果が全てなのだ」
「では、負けた原因は総司令官であるあなたにあると言うことですね」
「貴様っ!」
叫んで拳を振り下ろしたフォークを一瞥して、ライナは隣でにやにやと笑いを浮かべていた、三学年のケビン・ウィリアムを見る。
「笑っていますが。原因の一端はあなたにもあるのですよ。最後にテイスティア先輩が突撃をされた際に、あなたは何をされていたのです」
「……なっ」
「何をされていたのです?」
突然の言葉に驚いたウィリアムに、ライナは言葉を続けた。
青い相貌が集中して、戸惑ったように、口を開く。
「それは艦隊を集めて、敵の包囲から艦隊を守っていた」
「それで勝てると御思いですか?」
「勝つことはできない。そもそも最初の時点で本来なら包囲される予定はなかった」
「端的に申し上げて、低脳の集まりですか」
一拍の呼吸をおいて、ライナは言葉を繰り返した。
「全て予定通りにことが進むと御思いですか。むしろ、戦略や戦術というものは予定通りに進まなかった場合にどうするか必要になると思慮いたします。思った通りにことが進むのであれば、そもそも考える必要などありません」
「私を誰だと思っている!」
叫んだ言葉は、ライナの隣から。
その厳しい言葉と視線にさらされていたウィリアムは、ほっとしたようにフォークを見た。
「総司令官です。即ち、全責任を取る立場ということです」
「ふざけるな。敗北した時の責任はテイスティアにあると、私は言った」
「お耳が遠いのですか。総司令官はあなたです、例え口でどういったところで、責任はあなたにあるのです。お忘れなきよう」
「くっ――」
怒鳴りかけて、フォークが顔を押さえた。
片目を押さえながら、奥歯を噛み締める。
その突然の変化にも、ライナの表情は変化しない。
押さえた方とは逆の目で、睨みつけ、しばらく何かを考えていた。
しかし、言葉には出さず、フォークは踵を返した。
同時にウィリアムもライナに対して、憎しみをこめて、睨む。
そこに今までの爽やかさなどはない。
「覚えておけ」
「ええ。とても、忘れられそうにはありませんね」
ライナの言葉に
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