第二話 〜始まる前のお話 後編【暁 Ver】
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「全く効かぬなぁ、小娘。だが、今日はこれで引いてやろう。だが、憶えておけよ。今度会った時がおぬしらの……あ、痛ぇっ。ちょっとまだ台詞の途中、痛! ふははははっ、さらばだ! ……じゃあな。約束、守れよ」
ナギはローブの裾を翻しながら足早に立ち去っていった。イマは彼を追っていく途中で一度だけこちらを振り返ったが何も言わなかった。
「イマは一言も喋りませんでしたね、そう言えば」
「……やくそくってなに?」
────── 守ってみせます
「いえ、たいしたことじゃありませんよ」
桐生は、もう既に姿が見えなくなった二人に深々と。頭を下げた。
夜が明けても、まだ問題は解決していない。『彼ら』はもう追ってはこないだろう。だが、それだけだ。『魔法世界』から抜け出さなければ、追われていることには変わりはないのだから。大規模な再構成を行った所為か、体調も芳しくはなかった。見張りをするために殆ど睡眠をとっていないことも影響していた。
「キツイ、ですね……」
いっそのことアスナを連れて一か八かで『跳んで』しまおうかと考えた時。懐かしい声が聞こえた。
「やっぱり、要領が悪いわね」
そこには一年ぶりに見る気が強そうな大きな瞳があった。
彼のことは逐一『見ていた』。極力、手は出さないようにはしていたが昨日の出来事は肝が冷えっぱなしだった。偶然が重なった結果、どちらにとっても大事には至らなかっただけの話だ。追われている身分は変わらず、挙げ句の果てには、ここから脱出する手段も手詰まりらしい。甘やかすつもりはないが、こういう場合は手を差し伸べてもいい筈だ。何しろ──── 友達とはそう言うものらしいから。
「久しぶりですね」
「そうね」
「……もしかして、ずっと制服なんですか」
「いいじゃない。汚れたりしないんだし」
「はぁ」
「ところで、そこのちっこいのを紹介しなさいよ」
アスナは桐生が寄りかかっている大きな木の陰に隠れながら、『リリー』を見ていた。アスナが右手に石を持ちながら桐生へと目で問いかける。桐生がゆっくりと首を振ると、アスナは持っていた石をころりと足下へ落とし、周りを警戒する小動物のようにリリーを再び見ている。
「……あんたどんな教育してんのよ」
桐生はアスナの様子とリリーの不機嫌そうな顔を見比べて苦笑いを浮かべるしかなかった。
「あなた達をを別世界へ跳ばすわ」
桐生は無駄だと思いつつも一応効いてみる。出来れば彼女の手を煩わせたくはなかったからだ。
「あのね、あなたの力では最早どうすることも出来ないところまできてるのよ? ……知らないみたいだから教えてあげるけど、賞金
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