第二話 〜始まる前のお話 後編【暁 Ver】
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に桐生の影へと隠れながら怯えていた。それを見たイマは肩を竦め、ナギはばつが悪そうに頭を掻いた。
「その通りなんだが、な。おまえと話がしたくてな。……その娘をどうするつもりだ。このままで良いなんて思ってないだろ?」
「あなた達へ託せば、この娘が幸せになりますか?」
「なるさ。いや、してみせる。……なんて言ったところで納得はしないだろ?」
「……大方、肉親の誰かにでも頼まれましたか。この娘の『力』は稀少です。返してもまた利用されかねないと私は考えています。知ってますか? この娘、何かしらの魔法を施されていますよ」
「冗談、だろ」
「残念ながら本当です。魔法なのか、薬の類いなのかはわかりません。感情が恐ろしく希薄なんですよ。殆ど話しませんし表情も動きません。最初は幽閉されていた所為だと思ったんですが……感情を抑えるようにしたのは恐らく扱いやすくする為でしょうね。本当に……この娘は連中にとって文字通りの『道具』に過ぎなかったんでしょう」
ナギは奥歯を噛みしめながら桐生の話を聞いていた。怒りで顔を歪ませながらも何とか声を絞り出す。
「だけど、俺は約束したんだ」
「二度目ですからね。今度はどんな手段を使うかわかりません。場合によっては記憶を消して、都合の良い人格にされてしまう可能性も否定できません。わかってるでしょう、ナギ? 要人の暗殺や誘拐を防ぐのがどれほど困難か」
「……お前なら守れるって言うのか?」
「守ってみせます……なんて言っても納得はしないのでしょう?」
「そうだな」
桐生はナギの言葉が合図だったかのようにゆっくりと立ち上がった。
「結局、こうなるんですね」
「仕方ないさ。御互いに譲れない物が有る。だったら……殴り合うしかないだろ?」
「殴り合いは得意ではないんですが」
「言葉の綾だ、流せよ」
桐生はアスナへ安全な位置まで下がっているように言い含める。それと同時にイマもナギから距離をとった。彼も手を出す気はないようであった。
「勝てると思いますか」
「やってみなきゃわからないだろ」
闇夜の森へ生暖かい風が吹く。木々が鳴き声を上げ、虫の音が止んだ。動いたのは同時。ナギが自慢の杖を振り上げ、桐生が右手を突き出した──── 強大な魔力の奔流と閃光。そして、大地を揺るがすほどの轟音。抉られた大地が砂塵となって舞い上がり視界を塞ぐ。イマは固唾を呑んで勝負の行方を見守る。欲を言えばどちらも無事でいて欲しかった。どちらの言い分も理解出来るのだ。ナギは『魔法使い』としての秩序と信念。そして、一人の女性との約束。桐生は……イマの推測ではあるが、彼は『彼女』に救われたのだろう。以前の昏い影がなくなっていた。
もうもうと立ちこめる土煙が徐々
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