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空を駆ける姫御子
第二話 〜始まる前のお話 後編【暁 Ver】
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上空から巨大な人影が彼へと迫り来る。体長五メートルほどのゴーレムが大地を揺るがす轟音と共に土煙を上げながら、彼の前に降り立った。遠巻きに状況を見ていた敵軍の兵士達が一斉に歓声を上げる。

 彼は眉一つ動かさず、能面のように表情を崩さず。少々ずれた眼鏡を指先で直し、そのついでとばかりにゴーレムの巨体をついと見上げ。ただそれだけで、巨大なゴーレムは上半身と下半身を別れさせる結果になった。耳を劈く轟音と共に上半身が大地へと落ち、砕け散る。ゴーレムが一瞬で物言わぬ土塊へと変わった光景を目にした兵士達は今度こそ悲鳴を上げて敗走を始めた。

 彼は──── 桐生はそれを一瞥もせずに踵を返し、戦場を後にした。







 彼───── アルビレオ・イマは桐生を心配していた。出会った当初は他のメンバーとにこやかに談笑している姿を見かけたものだが、最近はあまり笑わなくなり、他の人間とも必要なとき以外、喋らないようになっていた。自分とは口調や性格も割と似ているところもあり当初から仲は良かったが、『ナギ・スプリングフィールド』とはあまり相性が良くなかった。これは単純に大雑把なナギの性格と、理屈っぽい桐生の性格の問題ではあったが。

「アル、どうした?」

 ナギがいつの間にか天幕に入ってきていた。

「桐生君の事を少々、ね」

 イマが桐生の名前を出すとナギはどうしたものかと頭を掻いた。

「奴さん、どんな様子だ」

「……あまり良くはありませんね。戦闘に支障は出ていませんが」

「あいつが抜けるのは正直に言えば避けたいな。あいつの御陰で戦闘が随分と楽になった」

「ええ。彼は意図的に殺さないようにしているようですしね。ラカンなどは甘いと言ってますが」

「戦場で死人が出るのは避けられん。だが、あいつにはあいつの考え方があるんだろうさ。それを否定は出来ないし、況してや誰も不利益を被っていない以上は好きにさせるのがいいぜ」

「結局は現状維持ですか……」

「仕方ないさ。俺たちだって遊びでやってるわけじゃない……それは、あいつだって覚悟してる筈だ」

「……『念動力』、『千里眼』、『瞬間移動』ですか。確かに惜しいですね。瞬間移動と千里眼なんて斥候や間諜だけでなく要人や人命救助にも使えますからね」

「便利だぜ。詠唱も必要ない上に『杖』のような触媒もいらない。おまけに……『死なない』んだからな」

 そう、ナギが言った通り桐生は死ぬことがない。桐生がメンバーに入って間もなくの頃だ。強力な魔法を受け上半身が吹き飛んだことがあった。その場にいた全員が桐生の死を目の辺りにし、一気に怒りを爆発させようとした時。吹き飛んだ彼の肉片と血が……瞬く間に『黒い粒子』に分解されたのだ。粒子は渦を巻きながら泣き別れた下半
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