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空を駆ける姫御子
第一話 〜始まる前のお話 前編【暁 Ver】
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。鏡に映し出された姿は。私の。見慣れた物ではなかった。

「あなたには『どんな姿に見えてる?』」

 声が震えるのを抑えられない。

「どんなと言われても……何故か、私が学生の頃に通っていた高校の制服ですね。背は、160……いや少し足りないでしょうか。肩に掛かるくらいの黒髪に黒目。目に力がありますね、気が強そうです。年齢は……高校生くらいに見えますが。スタイルも良いと思いますよ。……私の独断なので保証は出来ませんがね」

 色んな人間を見てきたと言った彼らしい物言いだ。服装は恐らく彼にとって一番イメージが強い学生時代が強く反映されたのだろう。だけど、容姿が変わったのは何故? 彼の態度や言動から知り合いに似ているわけではないらしい。まさか────

──── 名前とはその人を現す大事な物だと思いますがね

 名前を付けられたことによって、本来の姿に固定された? そうとしか説明できない。もう一度、鏡の中の自分をまじまじと見る。本当に気が強そうな面構えだわ。服装は兎も角として、彼が言ったようにスタイルも悪くない。うん、本当に──── 悪く、ない。視界が滲む。そうか。泣いているのか、私は。

「え、ちょっと待って下さい。何故、泣いてるんでしょうか」

 慌てふためく彼の声を聞いただけで今は満足しておこう。考えなければいけないことは山積みだが、差し当たっては彼が天寿を全うした時に魂を消さない方法。私に『本当』の姿を教えてくれたことに比べれば安いものだ。そして。

「ありがとう、桐生」

 彼が息を飲んだのが気配でわかる。何せ視界が滲んでよく見えないのだ。

「気に入って頂けたようで何よりです……どういたしまして」

 私が言った『ありがとう』の意味は少し違うけれど。いつか教えてやろう。






「その扉を潜れば異世界だから」

 私は自分でも綺麗だと思える細い指先で扉を指し示す。

「なるほど。便利なものですね」

「本当に良かったの?」

 今更にして意味のない質問をしてしまった。魂の『加工』は──── 既に終わっている。

「……今まで生きてきて後悔などないと胸を張れたら良かったんですがね。現実は甘くないです。色々と後悔しっぱなしではありましたが、それを他人の所為にしたことは一度もありません。自分で決めたことですので」

 彼は今までもそうやって。自分が選択した結果に悔いを残しながらも前を見て生きてきたのだろう。そして、これからも。

「要領が悪いって言われない?」

 私がそう言うと、わかりやすく苦笑した。

「会社の先輩に「おまえは人生の器用貧乏だよな」と言われました。言い得て妙と言いますか。意味はわからないのに何となく納得できてしまうところが腹立たしかったで
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