第101話
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あの一騒動のおかげなのか、五和は少しずつだが落ち着きを取り戻していた。
それを見越して麻生は五和に話しかける。
「そういえば、名前は?」
「はい?名前ですか?」
「俺達はオルソラを助ける時に顔は合わせていると思うが、名前までは知らない。
案内してもらうのに、名前が分からないと不便だろう。」
「そ、そうですね。
私の名前は五和と言います。」
「俺の名前は」
「知っています。
麻生恭介さん。
私達天草式を助けて下さった恩人です。」
「そんな恩を感じなくてもいい。
礼なら火織にでも言ってくれ。」
あの時、神裂が助けを求めなければ麻生はオルソラの奪還に手を貸さなかっただろう。
あくまで頼まれたから助けただけであって、そんなに感謝されるいわれはない。
そう言う意味を込めて言ったつもりなのだが、五和は気づいていないようだ。
「それで、これからどうするんだ?」
「オルソラさんの引っ越しは今日中に終わるらしいので、それまでは街を案内、もとい観光しようと思っています。
宿の方も私達、天草式が用意しますので楽しんでください。」
五和の案内のもと、麻生はキオッジアの街の観光する。
「ここは街の中に運河があるんだな。」
街中を歩きながら麻生は率直に思った感想を述べる。
隣に歩いている五和は麻生の感想に答える。
「このキオッジアの中心部は、三つの運河に分断さえたアドリア海に島街なんです。
横切るだけなら四〇〇メートルくらいしかない小さな街なんですよ。
どうあっても土地は大きくならないので、その分ぎっしり建物が並んでいます。
なので、周りを見渡せば分かりますが、家と家の隙間はすごく狭いんです。」
そう言われ、麻生は周りを見渡した。
目の前には運河があり、青の中にわずかな緑の混ざった海水が、定規で線を引いたように街を分断していた。
幅は二、三〇メートルといった所だ。
その両岸に沿って平行に二本の道路が走っていたが、その途中でいきなり家に塞がれた。
ベージュや白の平べったい家の壁々は、まるでそれ自体が堤防であるかのように運河のギリギリまでせり出している。
一軒一軒の間隔も極めて狭く、サッカーボールも通らないように見える。
すると、麻生の視界を横切るように、運河を小型のモーターボートが流れていく。
運河の両岸には隙間もないほど大量のボートが接岸してあった。
運河の幅の半分ほどが占拠されてしまっている。
つまりそれぐらいの数が生活に必要で、交通の基盤そのものに海が組み込まれているのだ。
ボートはレジャー用に磨かれておらず、どれも使い古した色合いのものが多い。
「普通に道路は使えず、船を使わないと行けない道がある。
だが、船は運河に沿
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