第十八話「小悪魔な彼女」
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「まったく、少々ふざけ過ぎだ」
思えば昔からそうだった。清楚な印象を受けるフィアだが、その実悪乗りするきらいがある。
小悪魔的基質とでもいうべきか、相手をからかうことに悦びを見出す困ったちゃんなのだ。まあ、そのからかいも子供染みたもので可愛らしいものだが。
しかし、今の彼女は昔とは違い色々と成長している。故にこのような行動をとられると俺の心臓によろしくない。
コホンと咳払いし、先程から気になっていたことを尋ねる。
「ところで、フィアはなんでこの学院に編入を?」
「それはもちろん、クーがいるからよ」
「……えっ?」
思わず歩みを止めた俺にフィアは微笑む。
いたずらが成功した小悪魔の笑みを。
「って、言ったら信じるかしら?」
「……」
無言で脳天目掛けてチョップ。今度はちょっと強めだ。
「痛っ」
「馬鹿言ってないで行くぞ」
歩みを再開した俺の後ろで小さくフィアが呟いた。
「もー、クーが先に行ってきたのに。まったく、フローレン・アズベルトはいけずね」
三度、足が止まった。
勢いよく振り返る。
「……なぜ、知っている」
俺がフローレン・アズベルトだと知っている人物はグレイワースの婆さんただ一人。これはフィアにも伏せていた情報のはずだ。
知らず知らず険しくなっていた目がフィアを捉えて離さない。その表情の変化一つたりとも逃がさん……っ!
対してフィアはきょとんと目を瞬かせた。
「なぜって……えっ? もしかして覚えていないの?」
「うん?」
「ほら、三年前のあの時、クーが言ってたじゃない。あっ、もしかしてお酒が入ってたから覚えていないのかしら」
「酒?」
三年前の出来事で酒? というと、あのパーティーになるが…………あ。
「……すまん、確かに自白したな」
「でしょ? もう、クーったら変なところで抜けてるんだから」
「……返す言葉もない」
三年前、とある事件で再開した俺とフィア。その事件を無事解決し、身近な者たちを集めてパーティーを行った。
その後、フィアと二人で飲んでいた時に酒の勢いでぽろっと口にしてしまったのだ。
――酒に飲まれるとは、俺もまだまだだな……。
自分の馬鹿さ加減に呆れる次第だ。
「あー、だったら分かると思うが、俺が本人だというのは伏せておいてくれ。知られるとまずいからな。切実に」
「ええ、それについては理解しているつもりよ。みんなには秘密にしておくから安心して」
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