第十八話「小悪魔な彼女」
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「だが、フィアナはいいのか? 護衛が俺で」
問題は護衛者本人が納得しているか否かにある。
その辺はどうかと思い聞いてみると、彼女は微笑みを浮かべて首肯した。
「もちろん。頼りにしてるわ、リシャルト君」
「そうか……。ところで、俺を指名したのは婆さんか?」
俺の実力を正しく理解している一人に訊くと。
「いいや。そこのお姫様本人さ」
意外や意外。答えはNOだった。
「そう、私が指名したの。護衛はリシャルト・ファルファー君にしてもらえるようにって」
「そうなのか?」
「ええ。だって素敵じゃない? ただ一人の男の精霊使いと旅行に行けるなんて」
そういってフィアナは俺の指に指を絡ませて上目遣いで見上げてきた。
わずかに紅潮している顔にどこか潤んだ瞳が相まって、不覚にも鼓動が一段高く高鳴りを覚える。
赤くなった顔を見られないようにと顔を背けた。
「旅行って、これは任務だぞ」
「あら、任務だけど旅行みたいなものでしょ? ガドの街まで遠いのだから」
――この娘はこういう性格だったか?
意外な一面を見たが、とりあえず今はチームメイトにも報告するのが先決。
「じゃあ、早速クレアにもこの話をしてくる」
「ああ。だが急げよ。明日には出立してもらうからな」
「クレア?」
初めて耳にする人名にフィアナが首を傾げた。
「ああ。俺のチームメイトだ」
「ひょっとして、クレア・エルステイン?」
「ん? 既知だったか? って、ああそうか……」
元精霊姫候補なら知っていて当然か。
災禍の精霊姫――ルビア・エルステイン。彼の精霊姫と同じ【神儀院】で修業したのだ。ならば、その妹にあたる存在も知っていて当然だろう。
「あの人の、妹……」
フィアナの唇がかすかに震えた。
その瞳に憤怒や恐怖、侮蔑といった負の色は見られないが、思うところもあるだろう。
しかし、彼女は俺のチームメイト。こればかりは個の感情を優先させるわけにはいかない。
「すまないが、クレアは俺のチームメイトだ。彼女の同行は必須と受け取ってほしい」
しかし、返ってきた言葉は――。
「ええ、もちろんよ。妹にまで負けるつもりはないもの」
揺るがない瞳に、芯の通った声だった。
† † †
執務室を出た俺はフィアナに校舎の中を案内して回っていた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ