第二部 文化祭
第47話 既
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うことよ」
──え?
まりあは一瞬、その言葉の意味を呑み込めなかった。
「す、すっぽかしたわけじゃないぞ。忘れてただけだ」
「なおひどいわよ」
しかも、和人は否定しない。まりあが気になったのは、すっぽかした、という部分ではない。
──デートをすっぽかすって、どういうことよ
前々から、誰から見てもお似合いの二人だとは思っていた。それも当然、もう既に、2人は付き合っていたのだ。
現に、和人の明日奈を見る眼は、見たこともないような穏やかな光を宿している──これがきっと、何よりの証拠だ。
明日奈には敵わなくても、この気持ちだけは伝えておこう。そう決めたのに、2人の間にはもう、とっくに強い絆が生まれていたのだ。
明日奈と視線が絡み合う。風に揺れる栗色の髪を軽くすき、明日奈はいたずらっぽい微笑を浮かべた。
「やっほー、まりちゃん。ごめんね、この人借りていい?」
「……か、借りるもなにも。キリトは、アスナの彼氏じゃないですか」
──ええっ!? ち、違うよー。
そんな返答を、まりあは期待した。しかし明日奈はにやっと笑い、和人に腕を絡める。
「ふふ、それもそうだね。それじゃあキリト君、行きましょうか」
「え、どこに?」
「もう! 君から誘ったデートなんだから、たまには君がリードしてよ」
「冗談だって、行こう行こう。それじゃあな、まりあ」
和人が手を振り去っていく──あまりにも美麗すぎる恋人と、肩を並べて。
行かないでほしい。ずっと、自分の隣にいてほしい。しかし、そんなまりあの想いは、決して届かない。
まりあの眼から、一筋の雫がぽたり、落ちた。床に敷かれたカーペットに吸い込まれ、儚く消えた。
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