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悪霊と付き合って3年が経ったので結婚を考えてます
1年目

秋A〜あるドラマーの休日〜
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?と自分で自分を指差す。

「そうだ。お前さんしか居るまい。お前さんはドラマーか?」

 僕は、はい、そうですが、と、どこかおどおどしながら返した。
その返答に店主は、ふーむ、と不精髭(ぶしょうひげ)を触りながら、僕の体を舐めまわすように見つめてくる。
なんだよ、このじいさん……。

「お前さん、あんまり体鍛えてないな? バスを踏む足がよく遅れたりせんか?」

ずばり言い当てられ、ドキッとする。僕はあまりキツイとこはしたくない主義で、肉体改造など、それこそドMがするもんだろう、と怠けてしまってる現状だった。

「ははっ…。まぁ、僕は彼らに誘われて始めただけですから。趣味も特になかったし、音楽くらいやっておこうかなぁ、ってレベルで……」

それを聞いた店主は目を(つむ)り、一言、もったいない、と漏らす。

「お前さんは、いい体幹を持っとる。筋肉の付き方のバランスがいい。鍛えればどんどん上手くなれるはずだがな……」

僕は背筋をピンと張って驚いた。
実際、うちのメンバーはかなり上手い。僕はそれについて行くのに必死で、初めの頃は頑張ってみてはいたが、最近は自分でも思うようにいかず、なんとなくやれればいいや、と思うようになっていた。

「あの二人はかなり出来るだろう。特にあの姉ちゃんは別格だ。お前さんはいい環境の中に身を置いとる。精進せぇよ」

 その言葉に少し身を震わせ、はい!、と強く返事をしながらお辞儀し、店を後にする。
店を出て、ふと振り返ってみると、店主が新聞を読みながらもこちらに向けて手を振っているのがガラス越しに見えた。
 僕はそれにもう一度大きくお辞儀をし、前方を歩いている二人の背中を追おうといつもより少しだけ力を込めて走り出した。



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