決勝戦 五学年〜後編〜
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
彼らでも十分に出来ていた。
敵の攻撃が一枚上手なだけ。
「ヤン・ウェンリーもそう思ったのか」
ヤンに向かうアレスを、後ろからテイスティアは見ていた。
その成長した彼をさらに後輩たちが見て、成長する。
そう考えて、アレスは小さく首を振った。
ヤンはそんな人間ではないなと。
撃ち込まれるレーザー。
攻撃が押し寄せるたびに、テイスティアの言葉が聞こえる気がする。
僕は強くなりましたか。
少しは成長しましたか。
そして。
僕の覚悟を見てくださいと。
そこにいるのはワイドボーンに怒られて逃げる子供ではない。
戦いの意味を――戦う理由を持った兵士だ。
一撃一撃が意味のある行動であり、攻撃となる。
『先輩、逃げてください!』
悲鳴のようなフレデリカの言葉が耳に入った。
彼女の目には迫りくるテイスティアが、恐ろしく映っているのだろう。
矢となって近づくテイスティアの艦隊を見ながら、アレスは唇を持ちあげた。
後輩の成長を喜びながら。
そして、全力で叩き潰す敵を目にして。
「でも、まだ甘いぞ。テイスティア、そんなところで満足してもらっては困る」
+ + +
背筋を寒いものが駆け抜けた。
近づくなと、テイスティアの直感が警告する。
近づいてはまずい、逃げろと。
しかし、矢の形を作ったテイスティアの艦隊は容易に艦列を変形させる事はできない。いや、例え出来たとしても逃げる事はできないだろう。
もはや攻撃は始まっている。
テイスティアに出来る事は、アレスの艦隊にぶつかるまでに、攻撃を仕掛け、消耗させる事だけだ。
「っ――!」
アレス艦隊からレーザーが伸びて、先頭がもぎ取られた。
一瞬、四年前のヤン艦隊の攻撃を思い出す。
だが、損害自体はそれに比べれば軽微。
おいそれと、ヤン・ウェンリーのような一点集中攻撃が出来るわけがない。
少なくともアレス先輩が、今までそれをしたことはなかったはずだ。
それでも絶妙なタイミングでの攻撃により、矢の先頭が平面となったが、戦闘には支障がない。
後方にいた隊を再び前に出して、矢を形作る。
左右の艦隊の速度を落とし、中央の速度をあげる。
突進をしながらの艦隊移動は、コーネリア先輩に教えられた。
大丈夫、いけると浮かんだ不安を消すように、奥歯を噛み締める。
と、テイスティア睨むモニターの視界で、アレス艦隊の花が開いた。
+ + +
「先輩!」
再び呟いて、フレデリカの目にはモニターの画面がはっきりと見えた。
アレス艦隊の攻撃が、テイスティア艦隊の先頭にピンポイントで命中する。
それにテイスティアは完璧な反応を見せた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ