決勝戦 五学年〜後編〜
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。
「……お前、案外良い奴だな」
『案外は余計です。と、言いたいですが、良い人間と評価されることは実に珍しい事です』
「テイスティアが……そんな事をね。あいつめ生意気に」
小さな笑い声とともに、サミュールは静かに頭を下げた。
「ありがとうな」
『演技が崩れておりますが』
「元々演技は苦手だし。そうか――そういうことなら、俺は邪魔だ」
『そう、何度も申しておりますが』
サミュールの頭の中に浮かぶのは、消灯後もずっと机に向かったテイスティアの姿だ。元より生真面目だった彼は落第の危険がなくなっても、ずっと勉強を続けた。
それは全て。
――別に成績はどうでもいいんだ。ただ、僕はアレス先輩と同じ景色が見たくて。
はにかんだように笑う笑顔を思い出す。
上にあがりたいわけでもない。
ただただ、ひたすらに偉大な先輩の背を目指した。
確かに四学年で学年主席を奪われたのは少しショックであったが、仕方がないと自然に思う事ができた。
そんな親友が背中を追い続けてきた先輩に、挑もうとしている。
負けるかもしれない。
自分は参謀としては失格なのだろう。
そんな自分をアレスは怒るだろうか。
怒るくらいなら、受け止める何て言わないですよね。
アレス・マクワイルドも、おそらくはテイスティアの覚悟を理解していた。
だからこそ、真正面で彼を受け止めると言った。
それが答えのような気がして、サミュールは静かに首を振った。
「邪魔はもうしないよ。もしかしたら勝てないかもしれないけれど。でも」
小さく呟いた言葉とともに、サミュールの目が真っ直ぐにモニターを見る。
そこに映るのはこちらを二千で防ごうとする小さな艦隊だ。
「ただ負けるだけはつまらない。悪いけど、相手になってもらうよ、後輩」
『望むところです。相手に不足はありません――ですが』
「ん?」
『テイスティア先輩の発言ですが、実は嘘です。上手くのってくださり、感謝いたします』
「えっ! おい、ちょ、それは反則だろ!」
『と、いうのは、冗談です』
小さな笑い声が聞こえて、サミュールは目を開いた。
唖然。
動きが止まった瞬間、モニターが明るく光る。
『主砲斉射三連――御機嫌よう、先輩』
+ + +
あの馬鹿はなぜ動きを止めた。
モニターの端で撃墜されるサミュール艦隊を見て、アレスは苦い顔をする。
どうせ碌な理由ではないのだろうが。
視線を動かしたのは一瞬――アレスは向かってくる艦隊を見つめた。
射程内に入るや補給を考えない高速の攻撃。
味方の連携は、弱く、効果的な打撃を与えているとは言えない。
これは二人を攻めるわけにはいかない。
通常の連携だけであれば、
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