1年目
夏
夏B〜世界中のだれよりもきっと〜
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ではないか、と言うほどの緊張の中、俺は後ろを振り返る。
―――しかし、そこに見えるのは窓から差し込む街頭の灯りだけだった。
一気にその高ぶりが冷めていく。
…もう、手の施しようがない。
頭の中が真っ白になり、俺は静かにパソコンの終了ボタンをクリックする。しばらく経って、Windowsを終了しています、という文字と共に目の前の画面は暗転した。
その直後だった―――
暗転したパソコンの画面に反射して自分のものとは違う影が映り込む。
ドクン、と心臓が跳ねあがるのを感じた。
そして、俺は恐る恐るもう一度後ろを振り返る。
「あ…、えっと…。おひさし、ぶり…?」
見慣れたはずの真っ赤なワンピース、そして顔が隠れるほどの髪が目に飛び込んでくる。
「あ…。」
俺は声を出せずにいた。そして目からは自分でも気付かないうちにボロボロと涙が溢れ出ていた。
「…どこに行ってたんだよ。心配したんだぞ。今日からしばらくおやつ抜きだからな。」
その時は泣きじゃくっていてきちんと話せていたかは自分でもわからない。それでも、前にいる「彼女」にこの言葉をかけずにはいられなかった。
「おかえり。」
俺の声は震えていたのだと思う。
「彼女」はその様子に少し戸惑い、驚きを見せたが、すぐにはにかむと言葉を返してくる。
「…ただいま。」
そしてその時初めて、今までは自分から触れようと思ったことすらなかった「彼女」に抱きついた。その体は氷のように冷たく、か細かったが、よしよし、と頭を撫でてくれる手からはどこかぬくもりを感じていた。
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「本当はね、私はずっと部屋にいたんだよ。」
涙が止まり、冷静になった俺はその言葉に驚きを隠せなかった。
「じゃあ、なんで俺に見えなかったんだよ?みんなから忘れさられてしまったのが原因じゃないのか?」
「それはね、“私があなたに忘れさられてた”から見えなかったんじゃない。“あなたが私を認識しようとしなかった”から見えなかったんだよ。」
そう言って「彼女」は言葉を紡ぎ続ける。
「幽霊ってのは、いると思うからそこにいるの。拓海が最初から、私がいない、と思いながら私のことを探していたから見えなかったのよ。」
25年間も人に忘れられずに存在したのに、今更消滅なんてするわけないじゃない。
そう笑いながら付け足して。
その言葉を聞いて俺は今までのことを一通り思い出す。
確かにそうだ。
俺は「彼女」はいなくなってしまった、と自分の中で決めつけて「彼女」のことを探していた。
それがいけなか
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