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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十話 フェザーン謀略戦(その2)
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たスペースに向かう。

「ヴィオラ大佐、今出て行った車は」
『こちらで用意した車です。彼らはこの後地上で我々のバックアップに回ります』
「了解」
場所取りか、やるな、太っちょヴィオラ。その腹は伊達ではないという事か。脂肪の代わりに知謀が詰っている! 頼もしいぞ! 段々ハイになってきた。

車をスペースに止めて気付いた。止めた場所は庁舎への出入り口のすぐ傍に有る。ぬかりない奴だ、段々デブが好きになってきた。シェーンコップも“ヴィオラ大佐はやりますな”なんて言っている。

車を降りると全員の時計の時間を合わせた、九時四十分。そしてヴィオラ大佐を除いて全員がサングラスをかける。本来は俺だけで良いのだが、それをやると逆に目立ってしまうからな。このほうが目立たずに済む。俺、サアヤ、ヴィオラ大佐、そしてシェーンコップを含めてローゼンリッターが十人……、全て合わせて十三人。縁起の良い数字だ、必ず上手くいく、そう念じて庁舎の中に入った。

フェザーン自治領主府、一階から三階までは一般市民に対して公開されている。主に行政のサービスを提供しているのだ。そのため人の出入りは比較的自由で俺が歩いていても咎められる事は無いはずだ。俺がヴァレンシュタインだと分からなければだが……。

四階から上は三階までとは違う。ここからは入退出用のセキュリティカードを持つ職員か受付でカードを貸し出して貰った外来者以外は入れない。そして四階より上に行くためには一階の受付の傍に有るエレベータからでしか行く事は出来ないのだ。このエレベータは二階、三階には止まらない、つまり入口は一階の受付の傍にしかない。そしてルビンスキーの執務室は七階に有る……。

非常階段も有るのだがこいつも一階から三階までとは別なものになっている。つまり一階から三階の人間は非常階段を使って上に行く事は出来ない。そして非常階段の最終的な出口は一階の警備室の隣になっている。警備室の眼を盗んで勝手に使う事は出来ない。

ヴィオラ大佐が受付で話をしている。アポは取ってあるのだ、問題は無いだろう。有るとすれば人数が多い事だが何と言って説得するかはヴィオラ大佐に任せるしかない。全員武器はアタッシュケースに入れて持ち歩いている。ローゼンリッターはエンブレムを外しているから判別は出来ない。ここを切り抜けられるか否かが第一関門だ。大丈夫だ、上手くいく。

ヴィオラ大佐が戻ってきた。顔には笑みが有る、小声で話しかけてきた。
「上手くいきました。まあ強盗や人攫いがここに来るはずが有りませんからな」
「そうですね」
イゼルローン要塞と同じか、IDカードを偽造しても調べられる事は無かった。ここに敵が来るはずが無い、その固定観念が警備を形骸化させている……。

「帝国の高等弁務官事務所に連絡を入れてもらえますか」

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