第百四十三話 一乗谷攻めその五
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「?妙じゃな」
「うむ、動きがばらばらじゃ」
「兵がめいめい動いている感じじゃな」
「おかしいのう、どうも」
「誰が将じゃ?」
「義景殿か」
まずは彼ではないかと思われた、だがだった。
「いや、幾ら宗滴殿でももっとまとまっておるな」
「そうじゃな、一人の将が下にいればな」
「もっとまとまっておる」
「では誰も将がおらぬのか?」
「しかも動きが悪いのう」
「そうじゃな」
どうもだった、朝倉の兵の動きのばらばらさと遅さが気になった、それは最初に越前に攻め入った時よりもさらに悪かった。
それでだ、鉄砲隊に壁のところにいる朝倉の軍勢を撃たせる柴田も言うのだった。
「ううむ、これは宗滴殿の様でじゃ」
「はい、似ていますが」
「動きが悪いですな」
「それも随分」
加藤に福島、片桐もその彼等を見て言う。
「似ていますが動きが悪過ぎます」
「まるで宗滴殿がここにおられぬまま遠くで采配を執っている様な」
「そうですな、どうも」
「そうじゃな、しかもじゃ」
柴田は銃撃に為す術もなく逃げる彼等を見てこうも言った。
「その宗滴殿も病にある様な」
「そんな有様ですな」
「これでは戦になりませぬ」
「ですな」
こう話すのだった、そして彼等は城壁のところにいる朝倉の軍勢を退けてからだった、そのうえで兵達を近寄らせていった。
攻勢は順調だった、信長も自ら馬に寄り自分の兵達が攻めるのを見ながら言った。
「ふむ、兵の動きが随分悪いのが気になりますが」
「それでもですな」
「ここは」
「攻める」
そうするとだ、竹中と黒田にも答える。その間にも青い大軍は城にさらに寄り堀を越えて城の壁をよじ登っていた。
それに対して朝倉の兵達は碌に反撃も出来ない、城攻めは嘘の様に順調だった。
橋も渡るが櫓からもまともな迎え撃ちはない、門も難なく開けられた。
織田の兵達が城に雪崩む込むとだった、朝倉の家臣達も兵達も次々と降った。こうして一乗谷城は呆気なく陥ちた。
信長は降った朝倉の家臣達と会った、そして彼等にこう言われた。
「実は宗滴様は逃げられました」
「今は何処におられるかわかりませぬ」
「采配は宗滴殿が執っておられました」
「ですがそれでも病だったので」
「最早」
まともな采配は出来なかったというのだ、それでどうにもならなかったというのだ。
難しい顔でだ、彼等は信長に言う。
「ですからとても」
「宗滴殿は今病の床にあられるので」
「お会いするのはご容赦下さい」
「どうか」
「わかっておる」
信長もその言葉を受けた、そしてだった。
宗滴はそっとしておくことにした、そのうえで朝倉の家臣達にこう告げた。
「御主達はこのまま従うならよい」
「織田家にですか」
「そうなのですか
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