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八条学園怪異譚
第四十五話 美術室その五
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 そしてだ、その校舎の中に入ると日下部がすぐにこう言ったのだった。
「ここは」
「日下部さんもよく来られてますよね、ここ」
「学園中を巡っておられますから」
「何度かな」
 実際に来ているとだ、日下部も二人に答える。
「来ている。馴染みとまではいかないまでもな」
「ご存知なんですね」
「そうなんですね」
「そうだ、ここの美術部の部室だな」
「はい、そうです」
「そこです」
「あそこは妖怪ではなくだ」
 何が出るかという話にもなった、日下部も言う。
「幽霊が出る」
「ううん、幽霊さんですか」
「あそこに出るのは」
「そうだ、中々面白い者でな」
 その幽霊がどういった人間かという話になってきた、話をしながら校舎の中を進んでいく。
「芸術に命を捧げていてだ」
「今も、ですか」
「芸術に励んでおられるんですね」
「そうだ。八条学園芸術学部の教授だった」
 生前の職業の話にもなる。
「そこで日本のピカソと呼ばれていた」
「えっ、ピカソですか」
「あの人ですか」
「そうだ、その独特の画風からな」 
 そう呼ばれていたというのだ。
「面白い人物だった、生前はな」
「ううん、じゃあ小林先輩みたいな感じだったんですか?」
「あの人みたいな」
「あの魔女の娘か」
 日下部は七生子について知っているという顔で答えた、声にもそれが出ている。
「あの娘の絵はな」
「かなり、ですけれど」
「凄過ぎて何て言えばいいのか」
 二人も七生子の絵については言葉がなかった、その表現もかなり曖昧な感じのものになってしまっている。
「他のことは凄いんですよね、確か」
「そう聞いてますけれど」
「うむ、書道も華道も日舞もな」
 そのどれもだというのだ。
「茶道もそうだがどれも免許皆伝だ」
「ってそれだけでスーパーマンですよ」
「完璧お嬢様じゃないですか」
 しかも日本の、だ。理想の大和撫子と言っていい。
「それで絵は、ですか」
「ああした感じなんですね」
「人は得手不得手がある、いや」
 日下部は言葉を慎重に選んで述べていく。
「感性がある」
「じゃあ先輩の絵は上手とか下手とかじゃなくて」
「感性ですか」
「ピカソを見ろ」
 再びこの画家の名前が出た。
「ダリやゴッホもな」
「確かに独特ですね、どの画家も」
「正直わからないものがあります」
「私はシャガールがよくわからない」
 日下部はメトロポリタン歌劇場の壁画も描いている二十世紀の巨匠の名前も出した。この画家の絵も独特である。
「あのセンスがな」
「一見すると何かわからない絵って多いですよね」
「そのピカソにしても」
「ゴッホも生涯に多くの絵を描いたが」
 千点はあると言われている、三十七年という短い年数だったが。
「一
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