第一物語・後半-日来独立編-
第五十五章 君の元へと《2》
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か一瞬でも迷う筈だ。
その一瞬さえあれば、実戦機ならば容易に距離を縮められる。
理解したセーランは、頷きを一つ入れた。
「戦闘艦は頼んだぞ」
『必ず、救ってくれよ』
と言い、騎神は速度を上げて離れていく。
離れ際、その騎神に向かって一言。
セーランは短く、決意を告げた。
「やってやるさ」
流魔操作を続け、残りの距離を縮めていく。
解放場から放たれている光が多くなり、濃く、青色に染まりつつある。光が弾けるまで、もう時間は秒単位だろう。
誰もが必死だった。
黄森の者達であっても、辰ノ大花の者達であっても、日来の者達であっても。
何時もは呑気なセーランであっても、額には焦りから出た汗が見える。
徐々に大きさを増す解放場と、解放場に立つ宇天の長。ドレイク級戦闘艦に向かい、迫る勢いで宙を進んで行く。
この機会だけが、宇天の長の元への近付ける最後の時だ。
幾ら後悔しても、憂いても、この機会しかない。
風を切り、宙を舞い、進んで行く。
戦いの音が響き、聴こえる。
そのなかでセーランは行く。
想い人に告白するために。そして、一緒に生きるために。
三年間、一目惚れという形ではあったものの彼女のことを想い続けた。
まだ片想いのままだ。だから行く。
委伊達・奏鳴に告白するために。
委伊達・奏鳴を救出するために。
●
駆翔天艦内は慌ただしくなっていた。
それもそうだ。このドレイク級戦闘艦・駆翔天が背負う解放場へと日来の長が向かっているのだから。
理由は一つ。
これから解放を行う宇天の長を救出しに来たのだ。
「何をやっている! 早く解放に取り掛かれ!」
「無茶言わないでください! 予備動作を終えずに解放を行えば、解放場本体にダメージが渡りますよ!」
「それでもだ! いいか、なんとしても宇天長の魂の流魔結晶は必要なのだ。今は解放場のことよりもいち早く解放を行うことに集中しろ!」
隊隊長は叫ぶ。
解放を開始するのはもう間も無くだが、日来の長はすぐそこまで来ている。
油断などしていれない。
焦りながら解放場の操作を行う者達は必死になって、皆それぞれの指を動かす。
予備動作を十分にしていないため、解放による解放場の故障を警告するアラームが鳴るが艦内にいる者達は無視した。故障したとしても、まず解放しなければならない。
宙に浮く一つの映画面|《モニター》の向こうでアラートの音を聴く、黄森の天桜の長は近くにいる隊隊長に向かって言う。
『やれやれ、私が行った方がよさそうだな』
「身体の方は……」
『無用な心配だ』
「そうか、だが無理も無茶もするなよ」
『偉そうに』
「幾ら織田瓜が黄森を治め、その織田瓜が学勢であっても子どもには代わりはないからな
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