第九章
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第九章
「それに観光もありませんし」
「ホテルさえありませんしね」
本郷はパンを食べながら応えた。とりあえず量だけはあったのでそれで満足できた。彼はとりあえず食べられれば満足することもできるのだ。
「それで観光なんて」
「そして産業ですが」
「工場も農場もありませんね」
「漁業だけですが」
役に応えるその言葉もくぐもったものであった。
「おわかりでしょう、おそらく」
「ああ、あの波止場に舟や」
「それも望めませんね」
「村として成り立たないとしか思えません」
牧師はここで言うのであった。
「私は週に一度車で最寄の村の教会から食料やそういったものを分けてもらってそれで何とかやっていっておりますが」
「村人はですね」
「わからないと」
「そうです」
こう二人にまた述べたのであった。
「果たしてどのようにして」
「ああ、それで気になったことですが」
本郷はここでまた牧師に対して尋ねた。
「いいでしょうか」
「はい、何でしょうか」
「ここの村人達のことですけれど」
彼が尋ねるのはこのことであった。
「あの容姿は誰もがなのでしょうか」
「容姿ですね」
「はい」
「あの独特の容姿のことですか」
牧師もそのことをわかっているようであった。言葉にも実際にそれが出ていた。
「あれはですね」
「ええ。あれは」
「奇怪なことに誰もがなのです」
「やっぱりそうでしたね」
「そうだな」
今の牧師の言葉を聞いて日本語で言い合う二人であった。話を聞いてここで一つのことに確信が持てたのであった。特に役はそうであった。
「これで一つ大きな証拠が出たな」
「そうですね」
「それでですが」
牧師は日本語で話し合う二人に英語で語り掛けてきた。どちらかというとケベック訛りを思わせるその英語でだ。
「ここの村の人達は昼は滅多に出ずに」
「はい」
「私は夜はいつも早く休むのですが」
こう前置きしての言葉である。
「何故かと申し上げますと」
「朝のミサの為ですね」
「はい、それです」
まさにそれだと。役の問いに対して答えたのであった。
「その為夜は早くに休むのですが」
「そうですね。では夜の世界のことは」
「殆ど知りません。ですが」
それでも彼は二人に話すのであった。
「どうやら村の人達は夜動いているようなのです」
「夜ですか」
「真夜中に時折話し声や歩く音が聞こえます」
こう二人に対して話したのであった。
「それで時々目が覚めてしまうのです」
「そうですか。夜にですか」
「わかりました」
二人はその話を聞いてまた頷いたのであった。
「夜にですね」
「普通は有り得ませんね」
「まさか夜に漁業をしているのでしょうか」
こうしたことも一応考えてみ
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