暁 〜小説投稿サイト〜
皇太子殿下はご機嫌ななめ
第35話 「さあ、こちら側に来るのだ。ラインハルト」
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
よりマシな帝国。いまよりマシな未来。いまよりマシな……。
 未来を信じられるというのは、何よりも強い。
 皇太子の命令一つで、兵達が死地に赴く。飛び込んでいく。
 いまよりもマシな未来を、帝国を作るために。

「こうして見ると、皇太子が出征を控えていたのも、計画通りだったのかもしれません」
「どういう事だ?」
「皇太子は無駄な戦いはしない。無駄に兵を殺さない。必要な段階で必要なだけ軍を動かす。逆に言えば、皇太子が軍を動かすときは、必要な戦いであると思わせることができます」
「なら、兵は文句一つ言わずに戦うだろうな。皇太子の指揮の下に」
「未来を作るために、ですか」

 こ、怖いな。これから同盟が戦うのは、戦争に嫌気が差している軍じゃない。
 未来を作るために死に物狂いで向かってくる軍だ。
 あらためて怖い相手だと思う。
 あの皇太子。この銀河をどうするつもりなんだ。
 怖いと思うのと同時に、それでもそんなにひどい事はしないだろうと、そう思わせるところがある。
 非人道的な行いは許さないだろう。
 たとえ同盟を征服したからといって、やりたい放題な事は認めないはずだ。
 敵にさえ、そう思わせる男。
 敵にすら信用を持たせることができる君主。
 会った事も無い相手なのに……。
 そう思っている自分がいる。

『民主共和制にとって、あの皇太子殿下は最大の敵ですよ』

 ヤンの言葉が脳裏を巡る。
 確かにな。あの皇太子が最大の敵だろう。
 あんな名君が二代も三代も続くわけが無い。必ず暴君が現れる。
 その時のためにも、民衆共和制を生き残らせなくてはならない。
 負ける訳には行かない。
 知らず知らずのうちにこぶしを握り締めていた。
 じっとり汗が滲む。
 そんな俺をヤンのやつがじっと見詰めている。
 これからが同盟にとって正念場なんだな。
 俺がそう言うと、ヤンは軽く頷いた。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ