第35話 「さあ、こちら側に来るのだ。ラインハルト」
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よりマシな帝国。いまよりマシな未来。いまよりマシな……。
未来を信じられるというのは、何よりも強い。
皇太子の命令一つで、兵達が死地に赴く。飛び込んでいく。
いまよりもマシな未来を、帝国を作るために。
「こうして見ると、皇太子が出征を控えていたのも、計画通りだったのかもしれません」
「どういう事だ?」
「皇太子は無駄な戦いはしない。無駄に兵を殺さない。必要な段階で必要なだけ軍を動かす。逆に言えば、皇太子が軍を動かすときは、必要な戦いであると思わせることができます」
「なら、兵は文句一つ言わずに戦うだろうな。皇太子の指揮の下に」
「未来を作るために、ですか」
こ、怖いな。これから同盟が戦うのは、戦争に嫌気が差している軍じゃない。
未来を作るために死に物狂いで向かってくる軍だ。
あらためて怖い相手だと思う。
あの皇太子。この銀河をどうするつもりなんだ。
怖いと思うのと同時に、それでもそんなにひどい事はしないだろうと、そう思わせるところがある。
非人道的な行いは許さないだろう。
たとえ同盟を征服したからといって、やりたい放題な事は認めないはずだ。
敵にさえ、そう思わせる男。
敵にすら信用を持たせることができる君主。
会った事も無い相手なのに……。
そう思っている自分がいる。
『民主共和制にとって、あの皇太子殿下は最大の敵ですよ』
ヤンの言葉が脳裏を巡る。
確かにな。あの皇太子が最大の敵だろう。
あんな名君が二代も三代も続くわけが無い。必ず暴君が現れる。
その時のためにも、民衆共和制を生き残らせなくてはならない。
負ける訳には行かない。
知らず知らずのうちにこぶしを握り締めていた。
じっとり汗が滲む。
そんな俺をヤンのやつがじっと見詰めている。
これからが同盟にとって正念場なんだな。
俺がそう言うと、ヤンは軽く頷いた。
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