第35話 「さあ、こちら側に来るのだ。ラインハルト」
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安心して帰って来い。
帰還する兵士諸君は、軍に戻るも良し。民間に入るも良し。好きに選ぶといい。
どこに行こうと、それぞれの階級を一つ上げ、新たな階級に応じた恩給を持って応えるつもりだ。
帝国は諸君の故郷だ。
良い思い出もいやな思い出もあろうが、それでも故郷に違いない。
帰っておいで。俺が出迎えるから。
そして諸君の顔を見たとき、改めてこう言わせてもらおう。
おかえりなさい、と』
これを聞いたとき、驚いたね。
これが銀河帝国皇太子にして帝国宰相の言葉かと。
そして本気でイゼルローンまで、出迎えるつもりなのだ。
「故郷に帰っておいで、ですか」
「あれには驚きましたね」
「しかしうまい手だ。政治的な発言ではなくて、郷土心に訴えてる。帰参した兵士達は、皇太子の帝国改革の強力な支持者になるだろうな」
おや、ヤンのやつが何か考え込んでいる。
どうしたんだ?
「前から考えていた事ですが……」
「どうした?」
ヤンのやつ、言おうか言うまいか迷っているようだ。
「あの皇太子。同盟の事を歯牙にもかけていないような態度を見せています」
「相手にしていない? そんな事は無いだろう」
「ええ、内心はどうであれ、対外的には相手にしていないように、見せかけています」
「どういう事ですか?」
「それが分からないんだ。一見して和平を考えているのかとも思ったんだけど、それだけでもないようだし、かといって好戦的でもない」
「だがお前さん、前に言っていただろう。こちらが手も足も出ないぐらい追い込んでくるって」
「ええ、それは確かに今でもそう考えています。ですが……」
いったいなにを考えているのか、分からないか。
嫌な気分だな。
まるで気づかないうちに、首を絞められているような気がしてきた。
気づいたときには、窒息する寸前になりそうな。
思わず自分の首筋を押さえた。
「しかし相手にしてないって、どうして分かるんです?」
「同盟の事を話題にして無いからだろう。最初に帝国と同盟の兵士諸君と言ったっきり、同盟の事を出していない」
「あくまで帝国の兵士達を相手に語りかけているんだ」
「そして帝国はトップにいる皇太子にして宰相が、自ら帰っておいでと語りかけた。翻って同盟はどうだ?」
「政治家は支持率と納税者が増えることだけを考えていそうです」
「政府の誰も、帰還兵に帰って来いとは語りかけていない。この差は大きいぞ」
「あの皇太子は人間を分かっているんですね。うちの親父も同じような事を言ってたのを、思い出しましたよ」
「そういえば、アッテンボローの親父さんはジャーナリストだったな」
人間、人の心か……。
それを分かっている皇太子が改革を行っている。
いま
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