第35話 「さあ、こちら側に来るのだ。ラインハルト」
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にしているのか」
「なにを言う、オーベルシュタイン。これも帝国改革の一環である」
「ただの悪趣味だ。宰相閣下は趣味で人を貶めたりはせぬ」
まーそうかもしれないなー。
あのお方は、フェザーン商人のように利に敏い方だからな。
「それにしても同盟側の政治家だけでなく、軍人も宰相閣下と会いたいらしい。捕虜交換の際、会談の場を作って欲しいと、言ってきてるぞ」
「なにを話したいのだ。それによっては宰相閣下も、会談の場を設けることに異存はあるまい」
「宰相閣下の事を知りたいだけだろう」
「ばかばかしい。そのような事では、論じるに値せぬ」
一刀両断だな。
あっさりと切り捨てやがった。
同盟の連中の好奇心のためだけに、忙しい宰相閣下のお時間を取らせるわけにもいくまい。
オーベルシュタインも熱くなってきた事だし、話題を変えるか。
「ふむ。卿の言う事には一理あるな。その件はこちらでも考えておくが、ところで卿は結婚しないのか?」
「突然なにを言い出すのだ?」
おや、驚いているな。
もう少しつついてやろう。
「いや、大事な事だぞ。いま帝国は人口増加、拡大策を講じている。政府の中枢にいる卿が、結婚しないというのは、不忠になるのではないか?」
「障害のある私と結婚しようという女性などおらぬだろう」
「なにを言う。劣悪遺伝子排除法は廃法になったのだ。そのような事は問題にならぬ。それとももしかして卿は、ラインハルトの様な者が好みなのか?」
「違う。違うぞ。私はまともだ。あれは宰相閣下が、ラインハルトをからかって遊んでいるだけだろう」
「そうだろうな。宰相閣下もお疲れだ。ささやかな楽しみがあっても良いだろう」
「ラインハルトは、反応するからいかんのだ。相手にしなければ良いものを」
「だから、からかわれるのだ」
「まったく困ったものだ」
いかん。話を逸らされてしまったようだ。
しかしこれ以上は、俺も結婚していない事だし、薮蛇になりそうだ。
■自由惑星同盟軍統合作戦本部 アレックス・キャゼルヌ■
「よう、よくきたな」
「キャゼルヌ先輩、お邪魔しますよ」
ヤンのやつとアッテンボローが揃ってやってきた。
用件は多分あれだろう。
あの皇太子の演説。あれを演説と言っていいのかはわからないが。
つい先日、捕虜交換に先立って、皇太子が同盟、帝国の両方に向けて通信を発した。
『銀河帝国宰相ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムだ。
帝国と同盟に囚われている兵士諸君。
ずいぶん長く待たせたが、諸君らは故郷に帰ることができるようになった。
諸君が出征した時よりも、少しはマシな帝国になったと自負している。
帝国の兵士達には、不安もあろうが心配しなくていい。
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