ニシオリ信乃過去編
Trick-12-1_で、殺人者さんはなんでこんな所にいるのかな?
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最悪、殺してしまうかもしれないが、それを考えられるほど余裕はない。
覚悟を決めた攻撃を奴へと振りかぶった。
刀を弾いた反動も利用して、警棒は奴のコメカミを狙う。
タイミングも申し分ない。このタイミングえは避ける事も反撃も出来ない。
その確信を否定したのは奴の顔だった。
警棒を振る際に見たのは奴の笑顔。
一瞬、隙を見せたのは罠かと思った。が、それも一瞬で否定された。
奴は罠を成功させた楽しい笑顔ではない。
何かから解放される清々しい顔だった。
ドゴ!
「ガァッ!」
奴の“顔”に衝撃が襲い、尻もちを着いた。
この衝撃に先程まで笑みを浮かべていた奴は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「なぜ、警棒で殴らなかった? って顔してるな」
右手を突き出したポーズを解き、奴を見下した。
その手は警棒ではなく、拳が握られていた。
「答えは簡単。
お前が俺に殺されるつもりだって分かったから。
お前の思い通りにしたくなかったからだ」
奴の目的は、殺すことではない。
殺されることだ
部屋に入った時は、血の赤色のインパクトが強すぎて気付かなかったが、
これは血ではない、ペンキだ。
血であれば多少の鉄臭さと生臭さがあるはずだが、この部屋にはない。
というか気付けよ、俺。
それに奴の行動だ。
あれほど殺気を出せる奴なら、もっと強くても不思議は無い。
それなのに俺と良い勝負が出来る程度の実力なんてありえない。
なにより、殺気が強すぎるのがおかしい。
強すぎる殺気は、いわば次の攻撃を教えることになってしまう。
いや、まさに奴はその為に殺気を強く出していたのだ。
殺さないために、殺す気の攻撃をしていた。
全ての攻撃が、殺気を利用したテレホンパンチになっていたのだ。
だから俺でも攻撃を避ける事が出来ていたのだ。
相手に避けられる攻撃を続け、部屋の演出までした。
決定打として奴の笑顔。何に捕らわれていたかは分からないが、
それから死ぬことで解放される、安堵から清々しい笑みになっていたのだろう。
「ふざけるな・・・
確かにお前を殺す覚悟をしていたが、死にたがりをわざわざ殺すつもりは毛頭ない。
勝手に一人で死んでいろ! 俺だって殺したら傷つくんだよ!
俺を巻き込むんじゃね!」
だから俺は直前に、振っている最中の警棒を手放して、奴の頬を殴り飛ばしたのだ。
そして、もう一つの真実にも辿りつけた。
「宗像。お前、人を殺した事が無いだろ?」
「!?
・・・・なんのことだい?」
その反応は当たりか。
「お前の殺気は本物だ。だから殺す技術に精通しているのは間違いない。
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