第二話 博打
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の血を引いた御落胤だって噂か?」
「ああ、俺は嘘だと思うんだが……」
「嘘だろうさ、奴が御落胤なら反乱軍は奴を陸戦隊の指揮官などにはしない。大事に育てて役立てる事を考えた筈だ、そうは思わないか?」
なるほど、と思った。確かにそれは有るだろう。
「多分、オフレッサーの庇護を得られないと分かって噂を流したんだろう。少しでも自分の立場を強化したい、そう思ったんだろうな。お前さんの事が頭に有ったかもしれん」
「俺の事?」
爺さんが俺を見て頷いた。
「皇帝の寵姫の弟でさえあれだけの影響力が有る、ならば……、そう思ったのさ」
不愉快な話だ、何処に行っても付いて来る。俺が顔を顰めると爺さんが軽く笑った。
「そんな顔をするな、お前さんがグリューネワルト伯爵夫人の弟だって事は事実だ。だからこそ武勲が正しく評価されてもいる。そうだろう?」
「それはそうだが……、面白くは無い」
爺さんがまた笑った。
「爺さんはリューネブルクがどうなると思う?」
「さあな、分からん。だが奴は使っちゃいけない手を使ったんだ、碌な事にはならんだろう。いずれは報いが来るだろうな、報いが来る前に奴がどれだけ大きくなれるか……、それ次第だろうぜ」
使っちゃいけない手か、貴族に縋って准将になった男の事を思い出した。爺さんはリューネブルクの死を予測しているのかもしれない。
「可哀想な奴だ」
「……」
「せめて女房と上手く行っていればな、少しは違うんだろうが……」
「……」
「家の中も、家の外も、気が休まらんのは辛いよな」
そうか、と思った。リューネブルクには安息の地は無いのだ。爺さんが俺を見た。
「お前さんに当たるわけだ」
「俺に?」
「八つ当たりだよ、お前さんに当たっても誰も文句は言わんからな。例えぶちのめされてもお前さんは伯爵夫人に告げ口はせんだろう?」
「……それは、まあ」
俺が答えると爺さんが笑い声を上げた。面白く無かった、俺は八つ当たりの対象か。
一頻り笑った後、爺さんは妙に真面目な表情になった。
「配置転換願いを出した」
「配置転換?」
「ああ、後方に、デスクワークにしてくれと頼んだんだ。少将だからな、もう十分さ」
「……」
この爺さんがデスクワーク? ちょっとイメージが湧かない。それこそ部屋を賭博場にでもしそうな感じの親爺だ。
「次の出征は出ざるを得ないが、その次はもう無いかもな。運が良ければ中将で後方に回れるかもしれない。兵卒上がりでは中将は終着点だが無理をして武勲を上げるつもりはねえ」
「そうか」
俺が答えると爺さんがフッと笑みを漏らした。
「もっとも上層部がどう思うか……。正規の教育を受けてないからな、戦場で使い潰すしか使い道が無い、そう思うかもしれない。そうなればずっと戦場に出る事になるだ
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