第二話 博打
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ば昇進できる可能性が高い、そう思ったんだ。もちろんリスクも有る、お前が死ねばとんでもない事になる。二度と浮上は出来ないからな。それら全てを考えた上で賭けた、お前なら生き残れる、武勲を上げ昇進できる、賭けに勝てるとな」
「司令部がお前の意見を受け入れずに奴の意見を受け入れた理由が分かっただろう。お前は武勲を上げる場と思ったかもしれねえ、だがな、奴はこれからの人生全てを賭ける場と思ったんだ。いやそれだけじゃねえ、亡命した事を後悔したくない、そう思っただろう。自分の生き様を賭けたんだ。お前とは覚悟が違うんだよ、司令部はその覚悟に説得されたんだ。お前にそこまでの覚悟が有ったか?」
「……いや、無かった」
爺さんが頷いた。
「責めちゃいねえよ。そんな覚悟なんて暑苦しいもんは無い方が良いんだ。生きるのが辛くなるからな」
「……爺さんは如何なんだ?」
「俺か……、今は無いな、昔の事は覚えてねえ。……多分無いか、有っても大したもんじゃなかったんだろう。忘れちまうくらいだからな」
そうかな、と思った。リューネブルクの事が理解できるのは爺さんも同じような思いをしたからじゃないだろうか……。
「分かったら不満顔してねえで仕事しろ。見方を変えればリューネブルクはお前に昇進のチャンスをくれたんだ、そうだろう?」
「……そう、だな」
「リューネブルクを好きになる必要はねえぞ、だが力量は認めて利用しろと言ってるんだ。奴はそれをやっているぜ。それが出来なけりゃお前は我儘なガキだ」
「ああ、そうだな」
爺さんが席を立った。“頑張れよ、小僧。俺はこれから哨戒任務にあたる”と声をかけると部屋を出て行った。小僧か……、違いない、腹も立たなかった。
■ 帝国暦485年 6月16日 グリンメルスハウゼン子爵邸 ラインハルト・フォン・ミューゼル
「何故私が卿に対して弁明せねばならぬ。事情は卿の令夫人が説明なさった通りだ。別に謝辞を求めようとは思わぬが、卿のおっしゃりよう、不快を禁じ得ぬな」
見れば分かるだろう、お前の妻が気分が悪そうにしていたから助けようとしただけだ。だがリューネブルクは妙に青白い顔をして俺に絡んできた。
「それは不快だろう。こういう場でもっとも会いたくない相手に出会ったのだからな」
「下種め、妄想もいい加減にするがいい。このうえ私の善意を曲解し私を貴様の水準にまで引き下げるつもりなら実力をもって貴様に礼節を問うぞ」
「実力をもって問うと? 一対一でか?」
「当たり前だ」
拙いか、とも思ったが止められなかった。前からこの男が気に入らなかった、ぶちのめしてやる。
「お、喧嘩か、楽しそうだな」
声がした方に視線を向けると爺さん、アロイス・リュッケルトがいた。ニヤニヤ笑っている。リューネブルクが顔
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