瞬殺、そして救済へ
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佐多兄弟は傍観する。
今までのように無力を噛み締めながらではなく、本当に、本当に、
自分たちの力が必要ない、と感じながら。
目の前のたったひとりの男を見ながら、思う。
発信機を外し終わった彼は、従業員が物言えなくなるほどの剣幕で、ファミレスを出、そのまま人目も気にせず全力疾走。
やがて辿りついたのは、人気の無いコインパーキング。
車を使って屋敷に行く気だろうかと思い、やはり先程同様自分たちの力が必要なのではないか、と彼に提案すると、
「車を奪って、屋敷に行く?俺にそんな技術ねぇし、お前らの力があればそれも出来るんだろうけど、そんなまどろっこしいコトしているヒマはねぇだろ?」
彼の言うとおり、既にタイムリミットまで、後十分程度の時間しかなかった。
じゃあどうするんだ?と彼に聞くと、
「車に載るのは合ってるけど、ちょっと違うかな。まぁ、俺の力があれば、こんなこと位できるかな?と思ってさ。」
そういって、近くにあった乗用車ーごく普通の中型だーを軽く持ち上げた。
そんな彼の行動に戸惑っている我々に一言。
「お前ら、後から着いてこいよ〜。」
そう言って、彼はその乗用車を思い切り放り投げ・・・・、
自らその放り投げた乗用車に飛び乗った。
宏助は今、初めて空を飛ぶ、という経験をしていた。
眼下には住宅街が見え、自分の周りに広がるのは青空。
高所恐怖症でなくとも、背筋が凍る体験だ。空飛ぶ車に飛び乗るなんて。
あの豪邸の位置は、ご丁寧にも楼(?)から貰った地図のおかげで分かった。異常な嗅覚や視覚を使えば、屋敷までの距離感もなんとなく分かった。
だから、乗用車を投げたときもしっかりと、屋敷の庭・・・初めて宏助があの屋敷に入ったときに通った道に投げたつもりだ。
乗用車に飛び乗るときも、必要最低限の体重しか掛けないように努力し、できる限りこの自分で投げた勢いを消さないようにした。
だから、先程タブレットで見た位置に・・・・屋敷の前庭にこの乗用車は落ちるはずだ。
そうこうしている間に、屋敷の周りを護る住宅が見えてくる。
と、同時に乗用車の高度が下がってきた。
しかし・・・・・・・
(はやすぎるな・・・・・・。)
幾らなんでも高度が下がるのが早すぎる。これでは、屋敷周りの住宅に激突してしまう。
「ま、そういう事態も織り込み済みだからな・・・・。」
宏助は先程佐多兄弟が話していたもうひとつの話について思い出す。
彼らはこう言っていた。
「明様はまだ殺されてはいない。麗さんが撃たれたことを知らないのでしょう。そして、麗は今、数発の弾丸で撃たれたあと、なんの治療もなしに、寝かされている。おそらく、彼らは、最初から、これを狙っていた。貴方と麗を分離させ、どういう訳か、麗が屋敷に繋がる隠し通路のことを知っていることも知っていた
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