第四十章
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第四十章
「若しかすればな」
「じゃあ二手に分かれますか」
「そうだな。そうしよう」
「それじゃあ俺はまた」
ここで再びであった。あの分身の術を使いまた分け身を五つ出してみせる本郷だった。これで彼はまたしても六人になるのだった。
「この術を使いますね」
「そうしてくれ。私もできる限り動いて攻める」
「御願いしますね。狙う場所はまずは」
「中心だ」
そこだというのである。
「身体の中心を狙っていく。いいな」
「あれですか。チャクラですか」
インドのヨーガで出て来る言葉である。身体の中心に七つ縦に揃っている。ここのそれぞれの力を開放することで己の真の力を発揮するのである。そしてそこは同時に人体の弱点でもあるのだ。
「そこをですね」
「その通りだ。衝く」
役は言った。
「それでいいな」
「そういうことで」
すぐに動いた二人だった。しかしその後ろにあの鱗が来た。それも急にだ。
「気付かれた!?」
「そうかもな」
二人の背から迫るその鱗達を背中越しに見ながら言い合う。
「その可能性は否定できない」
「ちっ、どうします?」
「今更どうこうできるものではない」
役は正面、邪神の身体に顔を戻して本郷に告げた。
「最早な」
「それじゃあこのままですね」
「一気にだ」
最早一刻の猶予もないということだった。
「やるぞ」
「ええ、それじゃあ」
「貫く」
まさに一撃で。
「いいな」
「はい、それぞれの場所につきましたよ」
本郷は分身達と共に六つの急所についていた。そして役は脳天に。弱点の中で最も効果があるとされるそこについたのである。
そしてまさに一気にであった。本郷も分身達も役もその手に持っている刀や剣をその赤く染まっている弱点をついたのだった。するとだった。
手応えがあった。間違いなかった。彼等は邪神の急所を確かに貫いた。
「やった!?」
「手応えはある」
役も本郷に対して告げた。
「間違いなくな」
「それじゃあ」
「下がるぞ」
その余韻に浸る間はなかった。もうすぐそこまで鱗達が迫ってきていたからだ。
分身達はそのまま貫かれ消えていく。鱗は邪神そのものの身体に突き刺さりそこから赤黒い血を出してみせた。しかし二人はそれを紙一重でかわせたのである。
かわした後に残ったのは邪神の巨体だけだった。彼は動きを止めていた。そうしてゆっくりと後ろから倒れていき海底に着く時に。その姿を消したのであった。
「よし」
「終わりましたね」
役も本郷も邪神の姿が消えたのを見て会心の笑みを浮かべた。その時に本郷の姿も一つになりそのうえで完全に元に戻っていた。
「これでもう」
「そうだな。鱗も消えている」
主が消えればだった。鱗も全て消え去ってしまっていた。
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