1年目
夏
夏@〜蝉の声を引き連れて〜
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。
ひっ…、と声を出してしまった。
そこには「彼女」が立っていた。柱だと思っていたものは「彼女」の足だったらしい。
慣れてきたとは言え、やはり夜中に「彼女」を見るのは心臓に悪い。
「うーん…。お寿司が私を包みこんでいく…。」
どんな夢だ、それは。
それより、寝てたのか、と驚いてしまう。
幽霊は枕元で立って寝るんだな…。
妙な雑学を得て、俺はベッドから降りて立ち上がる。
―――のどが渇いた。
彼女に驚いたからだろうか。夢のことはすっかり忘れてしまっていた。
俺は渇きを潤すため、台所へと足を向ける。
…背中には、ジンジンとした違和感を携えて。
―――…。……、み。
「拓海!!」
その声に気づきハッと飛び起きた。外では既にミンミンと蝉が鳴いている。
「今日バイトなんでしょ?そろそろ起きなくていいの!?」
そう言われ、ハッと壁にかかった時計へと目を動かす。
やばい。遅刻ギリギリだ。
「わるい!!遅刻しそうだから飯作るのは勘弁してくれ!!」
えー!、と言う不満の声を振り払うようにジャージを脱ぎ捨て、安っぽいTシャツの袖に腕を通す。
「それじゃ、行ってきます!!」
バタバタとバイトの制服とギターケースを持つと、一目散に玄関へと向かう。
靴箱に置いた鍵を取ろうと腕を伸ばすと、いってらっしゃーい、と不服そうに言う「彼女」が視界の端に映る。
窓の外から照りこむ強い日差しと蝉の声が「彼女」を通して見えた気がした。
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