1年目
夏
夏@〜蝉の声を引き連れて〜
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ライラしたが、ジョッキに残っていた酒と一緒にその気持ちごと飲み干す。
「おぉ、いくねぇ!タダでライブも見られて、金ももらえてあたしはハッピーだよ!あっはっは!!」
…人生とは不公平だ、と俺は神を恨んだ。
「ただいまー…、っと。」
「おかえり!遅かったじゃない!!こっちはお腹空いてるの我慢してたのよ!?」
そう言いながら頬を膨らませ、こちらに駆け寄って、いや、正しくはフワフワと宙に浮いて「飛び寄って」くる。可愛い子ぶっても「彼女」は悪霊だ。今の状況は誰がどう見ても、俺をあの世へと連れて行こうと襲いかかっているようにしか見えないだろう。
「あー、すまん。弁当買ってきたからこれ温めて食べてくれ。俺は明日もバイトだし、それが終わったらバンドの練習もある。もう寝かせてくれ…。」
「最近そればっかりじゃない!もう焼き肉弁当は食べ飽きたわよ!カロリーも高いし、太らせる気!?」
ちょっと、聞いてる!?、と「彼女」は声を張り上げているが、俺は聞こえないふりをしてそそくさとベッドに潜り込む。幽霊って太るんだろうか…。そんなことを考えているうちに、温かな布団の感覚に誘われ、意識は闇の中へと吸い込まれていった。
―――その日、俺は夢を見た。
夢だ、と理解できるということはこれが明晰夢というものだろうか。
遠くから真っ白なワンピースと長い髪をはためかせた女の子がこちらに微笑み、駆け寄ってくる。しかし、不思議なことにその面影に見覚えはない。これはモテない俺が作り上げた幻想に過ぎないのかもしれない。
夢の中くらいモテてもいいよな…。
そう思い、俺もその女の子に駆け寄っていく。
だが、その突如、世界が暗転した。
いきなりの出来事に俺は慌てふためきながらも、さっきまでそこにいたはずの女の子を探す。しかし、人影一つ見当たらない。
―――■■■■!!!!
夢の中の俺はその子の名前を叫んでいた。知らないはずのその名前を。俺が忘れているだけで、どこかで会ったことがあるのだろうか。そう思っていた、その時、背中に鋭い痛みが走り、そこからじんわりと温かな液体が肌を伝っていくのを感じた。夢の中では痛みを感じない、と聞くが、この痛みは本物だ。そして、背後から俺の耳元に誰かの顔が近づいてくる気配がした。
―――あなたを殺して、私も死ぬ。
その声にハッと我に返る。そこには見慣れた天井があった。
なんだったんだ…、あの夢は…。
わけもわからず頭を抱えたまま、目線をふと枕元に泳がせるとそこに青白く光る2本の柱のようなものが見えた。
頭にクエスチョンマークを抱えたままその柱の頂点へ向け視線を動かしていく
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