第二話
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は告げる。
タラップを踏みバスに二人は乗り込む。時間か場所が原因か、乗っている人はいなかった。
乗車場所を記録させるためのカードを機械に翳すその背にフェリの言葉が届く。
「あなたたちはこの街で私が焦がれた日常を過ごしていくのでしょう。それが仕方ないこととは分かっています。私の我侭だとは、傲慢なただの嫉妬だとは分かっています。けれど何が違うのだと、そんな思いが浮かんでしまうのです。私は――」
ドアの閉まることを告げる電子音が響く。ランプが付き互の間が閉ざされていく。それが閉まりきるよりも早く、フェリの言葉が二人に届く。
「――あなたたちが、嫌いです」
バスが動き出す。
透明なガラス一枚向こう。誰もいないバス停に一人で立ちすくむフェリの姿は小さく消えていった。
バスの中、二座席の窓際に座ったクラリーベル、隣にレイフォン。アパートへは若干遠回りするように進む経路に未だ見たことがない景色が窓の外を流れていく。
窓縁に頬杖を付き、風景を眺めていたクラリーベルがふぁと眠そうに口を可愛くあけた。
「眠ければ少し寝たらどうですか? 着いたら起こしますよ」
クラリーベルの視線がレイフォンを向き、何かを考えているように少し、時間が空く。
「二人になると偶に戻りますね。もっと砕けた言い方でいいですよ。ここでは同級生ですから」
「そうだね、ごめん」
「分かればいいんです」
クラリーベルの目がジロリとレイフォンを一度見て、外へとその視線が戻る。
「お言葉に甘えさせて貰います。……それとレイフォン、さっきのこと気にする必要はありませんよ」
一体どんなつもりの言葉なのだろう。聞こうにも既にクラリーベルの瞳は閉ざされていた。
窓に寄りかかって瞼を下ろしたクラリーベルにレイフォンは聞きたいことがたくさんあった。フェリとの話の時、何故つまらなそうだったのか。理由ができるとは何なのか。それに先ほどの気にしなくていいという言葉も。
だがきっと、それを今無理に知る必要はないのだとレイフォンは分かる。気にしなくていいと、そうクラリーベルが言った。何故だか不思議とその言葉を疑う気にはなれなかった。
それに何より、本当にうたた寝を始めたクラリーベルを起こす気などレイフォンは持てなかった。
小さな機械音だけが響き、細かな振動が車内に響く。することもなくレイフォンはクラリーベルを見る。
アパート近くのバス停までそう長くはかからない。話を聞くためだけに起こすよりも、つかの間のこの時間の方を壊したくなかった。
クラリーベルから移った様に不意にアクビが出る。無言の車内にこの小さく揺られる振動は確かに眠気が誘われる。眠るわけにも行かずレイフォンは視線をクラリーベルから戻し外へと向ける
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