第二話
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ォンは視線を感じた。立ったままのフェリの瞳がこちらを向いていた。遠いものを見るような、その目にはどこか憧憬が宿っているように感じられた。
「羨ましいですね」
「僕たちがですか」
「ええ。……きっと、あなたたちはそんな、何でもない日々を過ごしていくのでしょう。だから、その会話が私には羨ましい」
落ちた日が伸ばす影が、フェリのその小さな体と酷く不釣り合いに地面に映る。ずっと、訓練中でさえもやる気を見せなかったその瞳が、初めて感情に揺れていた。
フェリのその言葉がレイフォンたちとフェリとの間の距離を表していた。互の間のほんの二歩ほどの距離。それがひどく遠いモノのようだった。
「私は元はあなたたちと同じ教養科でした。けれど兄にその居場所を奪われました」
「ロス……生徒会長ですね。私たちと似た状況ですね」
クラリーベルのその言葉にフェリは小さく、どこか自虐的に口元を笑わせ錬金鋼を復元する。
「似てるのではなく同じです」
蒼い光が舞った。念威を放つフェリの髪、その全てが淡く発光していた。
髪は捻威繰者にとって念威を通す良質の導体だ。優れた念威操者はその念威によって導体が、つまりは髪が発光することがある。本来は末端が光る程度が精々だが髪全てというのはレイフォンは見た事がない。現実から薄く浮かび上がるような幽幻たるその光景にクラリーベルでさえ珍しいものを見たと僅かに目を見開いている。それだけの才能、素質をフェリは持っているということだ。
「正確には同じだった、ですがね。あなたたちは望みを果たし、私は曲げられた」
立ったままの体を休ませるようにフェリは体を小さく揺らし、足の位置を変える。
クラリーベルはレイフォンの方に体を寄せ、ベンチに十分な隙間を作る。
「よけれどどうぞ」
「ご親切にどうも。ですが結構です」
フェリはその場から動こうとしない。クラリーベルが詰めた分だけフェリとの距離が大きくなる。
「一般人として経験を……生活を送るためにこの都市に来た。そう言っていましたよね」
「ええ。ある程度知っているでしょうから言いますが、レイフォンは武芸者として有能です。有能であるが故の環境が許さなかったのもあるでしょうが、武芸者以外の道や世界を知りません。無知であるが故の障害というものもありますので」
「よく許されましたね。有能な武芸者は貴重でしょうに」
この世界において武芸者は汚染獣に対抗する最大の力。汚染獣に対する敗北は死に直結する以上、有能な力は外に出されず囲われる傾向がある。個で群に比し優る。レイフォンほどの力ならばそれは一段と偏重したものになってしかるべきはずだ。
「有能ですが、グレンダンにはそれ以上の使い手が多数いますので」
ともすればレイフォンのみな
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