決勝戦 五学年〜中編〜
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勝手に話を進めるとはどういうことだ?』
『ならば、総司令官の案があるのであれば、おっしゃってください』
『……っ!』
舌打ちが聞こえた。
音声でしか届かないが、おそらく本人は怒りをあらわにしているだろう。
舌打ちばかりではなく、歯ぎしりまで聞こえそうだった。
だが、テイスティアは言葉を待った。
『いいだろう。だが、失敗した時の責任はリシャール・テイスティア。全て君にあるぞ! 全てだ!』
「はい」
テイスティアはゆっくりと頷いた。
+ + +
包囲の中央で身じろぎをしていた艦の動きが代わった。
それは相手の四学年――リシャール・テイスティアを先頭にした鋒矢の陣形だ。
上手くなったなと思う。
砲火にさらされながら、艦列を整えて、矢を形作る。
それはコーネリアの艦隊運用を見ているようであった。
もちろん本家には劣るであろうが、学生であれば十分だ。
ましてや、過去のテイスティアを見ていればなおさらに。
形作る矢を見れば、アレス・マクワイルドはどこを狙っているかわかった。
こちらの左にいるフレデリカでも、右にいる二学年でもない。
自分だ。
アレスに対するよりも、アレスが援護する方が厄介だと思ったのか。
矢の狙いは確実にこちらに向けられている。
おそらく、それはこの状態になってフォーク艦隊が勝てる唯一の策。
この展開を、どの段階から考えていたのか。
迷いのない行動に、アレスは苦笑する。
馬鹿ばかりだなと。
「死ぬ気か。阿呆」
勝てる可能性があったとしても、先頭になるテイスティアの生存率は低い。
むしろ生き残る可能性の方が少ないだろう。
それでも、アレスに勝ちたいと思ったのか。
成長と考えるべきか、あるいはこの世界に引きづり込んだことを謝るべきか。
思案したのは一瞬。
全力を持って挑む相手に対して、余計なことを考える時間は多くはない。
コンソールを叩いて、アレスはテイスティアに相対する。
数はほぼ互角。
むろん左右からの援護が期待できるだけ、こちらが有利であろうが、敵は決死の覚悟で突撃を加えてくる。例え本当の戦いでないとは言え、フレデリカや二学年にとっては初めての出来事であろう。
良い経験にはなるであろうが。
『先輩。テイスティアがやる気ですね』
「そのようだね」
『どうします?』
「どうするとは?」
『……全体を下げて、テイスティアだけを縦深陣に引きづり込みますか』
親友の覚悟に水を差す言葉であるとは理解しているのだろう。
酷く言いずらそうに、しかし、サミュールは的確に作戦を告げた。
確かに、それはアレスも考えた作戦だ。
包囲を全体的に下げる事で、突出し
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