第一話 邂逅
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何しているのかな、爺さんの代わりに昇進した男だが」
「分艦隊司令官になったが死んだよ、戦闘中に首の骨を折ってな。二階級昇進で中将だ」
首の骨を折った? 分艦隊司令官が?
「こういう話は直ぐに広まる。汚い手を使って他人を蹴落とした、そう思われたんだろう。きつい任務にばかり当てられたようだ。部下にしてみればたまったもんじゃないさ」
「……では殺されたと?」
質問した声が掠れていた。戦闘中に味方の手で殺された……。
「そうじゃなきゃ首の骨なんか折るか? 奴の乗艦で死んだのは奴だけだったんだ。……奴とはあの後一度会った。向こうから訪ねて来たよ。何度も俺に謝っていたな、こんなつもりじゃなかったと言って泣いてたぜ。もしかすると自分の運命が見えてたのかもしれないな」
「……自業自得かもしれないが哀れだな」
俺がそう言うと爺さんが俺を見た。如何いうわけか悲しそうな眼に見えた。
「俺は奴を責めなかった。奴はな、自分には後二回武勲を立てる自信が無かったと言ったんだ。死ぬ前に一度でいいから閣下と呼ばれてみたいと。悪いとは思ったが貴族に縋ってしまったと……」
爺さんが首を横に振った
「責められねえよ、俺だって同じ立場なら同じ事をしただろう。兵卒の中で大佐まで進むのはほんの僅かだ。そして大佐で三回武勲を上げるのがどれだけ大変か……。兵卒上がりの大佐なら大体は戦艦の艦長だ、しかもボロ船を与えられる。それで誰もが認める武勲を上げなきゃならない、容易じゃないぜ。無理をして大佐で戦死する奴は結構多いんだ。俺には奴を責められなかった……。お前なら責められるか?」
「……」
爺さんが俺を見ている。悲しそうな眼だ。答えられなかった。爺さんの言う通りだ、俺にもその男を責める事は出来ないだろう……。
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