第一話 邂逅
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「筆記試験が合格ラインでも口述試験で落とすのさ。まあ好意的に取れば将官になるのはそれだけ大変な事だ、精進しろ、そんなところかな。悪意を持って取ればサル共が人間様の仲間入りなど百年早い、そんなところだ」
「サルは酷いだろう」
爺さんがニヤッと笑った。
「この部屋を見てもそう思うか?」
「……」
反論できなかった。司令部は物置部屋としか思えない部屋を爺さんに用意したのだ。
「あの、四度目で合格と聞きましたが……」
キルヒアイスが質問すると爺さんが無表情に“三回目の時にちょっとしたトラブルが有ってな”と答えた。
「口述試験の時なんだがな、首席審査官はシュターデンという男だった」
「シュターデン? 総司令部の作戦参謀に同じ名前の男が居るが?」
「そいつだよ。そいつがな“三回目か、残念だな”と言ったよ。そしてネチネチとどうでもいいような事を質問してきた。揚げ足とってその度に“所詮は兵卒上がり、この程度で将官になろうとは”、そう言って嘆かわしげに首を振ったよ。厭味ったらしくな。楽しかったんだろう、嬉しそうだったぜ」
シュターデン、弱い立場の人間を弄って喜ぶ、吐き気がするような男だ。
「普通はな、口述試験は三十分から一時間程度で終わる。だが奴は二時間近く俺をいたぶった、うんざりしたぜ。同席していた審査官も顔を顰めてたくらいだ。最後に“まあ仕方ない、合格させてやるか、最低点だがな”そう言ったよ」
シュターデンは合格点を付けた?
「良く分からないな、シュターデンは最低点とはいえ爺さんに合格点を付けたんだろう? 何故落ちたんだ?」
「同じ時にもう一人適性試験を受けた奴が居たんだ。そいつが合格した。但し、そいつは一回目だったがな」
どういう事だ? 何故その男が合格する?
「そいつの上げた武勲ってのが或る門閥貴族の子弟の命を救った事だった。助けられた奴の父親は喜んでな、望みを言えと言った。奴は適性試験に合格したいと言ったんだ。そしてその貴族は必ず望みを叶えてやると請け負った」
「それでか……」
思わず溜息が出た。爺さんが何度も不当な扱いを受けたというはずだ。
「人事局の担当者は奴を准将にするのを渋った。未だ一回目だし口述試験の成績は合格ラインに達していなかったからな。だがその貴族は諦めなかった。俺の試験結果を見て最低ラインだ、こいつを准将にするのなら自分の推す人間を准将にしろと捻じ込んだのさ」
「……」
「二人昇進させるという手も有っただろう。だが人事局の担当者は本来合格するのは一人だからと俺を落した。デスクワークの官僚だからな、前線で武勲を立てるという事がどれだけ大変か分かって無かったんだ。俺は大佐から准将に昇進するまで五年半かかったぜ」
五年半、少なくても十回以上は戦闘が有ったはずだ。
「……その男は如
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