第三十六章
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第三十六章
「だからこそだ」
「上にあがって、ですね」
「そうすればわざわざ踏み潰されることもない」
「それに上にあがれば」
本郷も言う。彼は役が言わんとしていることが全てわかっていた。わかっているからこそ言葉を合わせることができていたのである。
「こちらもこの化け物の動きがよく見えますね」
「そしてその弱点を攻めることもな」
「いいこと尽くしってわけですね」
その状況こそまさにそれだというのである。
「そういうことですね」
「わかってくれたならばだ」
「ええ、答えはそれ一つですね」
言うとだった。すぐにその身体を上にあげる本郷だった。まるで宙を舞うようにしてた。
役も同時にそうして動く。そのうえですぐにダゴンの顔の高さにまであがるのだった。
同じ高さで見る邪神の顔はさらに禍々しいものに見えた。漆黒になっている分だけその眷属である深き者達よりもそう見えていた。不思議なことにだ。
「さて、上にあがりましたね」
「これで随分楽にはなったな」
「少なくとも上から一方的に攻められることは絶対になくなりました」
本郷は言う。しかしここで邪神の巨大な腕が横から襲い掛かる。その先にはどす黒い色の鋭い爪がある。二人はその腕と爪をそれぞれ上下に動いてかわした。
その攻撃をかわしたうえで。本郷は軽く役に対して言ってみせた。
「こうして攻撃は仕掛けられますけれどね」
「しかしそのまま底に留まっているよりは遥かにましだな」
「そうですね。ずっと」
「そしてだ」
役は左手に数枚の札を出した。今度出したのは黄色い札である。
それを右から左に邪神に向かって投げる。すると札は忽ちのうちにそれぞれ数本の鋭い小刀になって邪神に襲い掛かるのだった。
それは一直線に魔物に対して襲い掛かる。しかしだった。
小刀達は邪神のその漆黒の額に当たるとあえなく崩れ落ちてしまった。まるで飴が割れる様にあえなく崩れ落ちてしまったのだった。
役はそれを冷静に見て。そのうえで言うのだった。
「生半可な攻撃では倒せないか」
「みたいですね。どうやら」
「しかしだ。攻撃は出せる」
それでもこのことを言うのだった。
「こうしてな」
「攻撃を出せないより出せるってことがですね」
「これだけでもかなり違う」
役の言葉は強かった。そこには攻撃が効かなかった悔しさは何処にもなかった。むしろそれは当然だと受け止めているものがあった。
「やられるだけよりもな」
「その通りですね。じゃあ俺も」
今度は本郷だった。その左手に数個の小さい球を出してきたのだった。
そしてそれをだった。先程の役がそうした様に邪神に対して投げ付ける。するとだった。
「むっ!?」
「何もこれで潰すってことはないですよね」
本郷は不敵な笑
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