暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
Standing
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
ァン!という乾いた音が遅れて鼓膜を震わせる。

頬を張られた、と認識したのは、それよりも更に後だった。

目を見開き、なすすべもなく地面にべしゃっと倒れた。しかし、胸倉を細くて白い手にむんずと掴まれて、すぐに上半身だけ起き上がらせられる。

間近で見るカグラの目は、轟々と猛り狂った焔が爛々と輝いていた。

「………恥、ですって?」

「う、うん……」

乱暴に胸倉を揺らされる。ぐらぐらと首が危なっかしく前後に振られる。

「ッ!どうしてしまったんですかッ、あなたはッ!!マイを助けたくはないのですかッ!」

「……助けたいよ」

「ならどうしてそのために動かないッ!立って歩け!前を向け!一筋の光があるのなら、それに向かってなぜ足を止めるッッ!!」

心に突き刺さる、言葉の数々。

返す言葉も、何も浮かんではこなかった。

黙り込むレンを突き放し、《炎獄(テスタロッサ)》と呼ばれる巫女は射殺すような視線を、再び地に臥せったレンに向ける。

「私達は行きます。あなたはどうするのですか?」

「ど、どうって………」

「どうするのですか?」

「……………………」

黙り込み、沈黙する紅衣の少年の前で、カグラは静かに立ち上がった。

……………ん?

「私()?」

はい、とカグラは頷く。

その背後の空間が揺らいで、多量の影が姿を現した。ぶわっ、と突風が顔を叩く。

「おまたせ〜っ、レン君!」

「待たせたな、《終焉存在(マルディアグラ)》殿。《炎獄(テスタロッサ)》殿」

カグラの背後に、風妖精(シルフ)猫妖精(ケットシー)の軍隊が出現していた。

その先頭にいて、カグラの隣に並び立ったのは、それぞれの領主達。

《軍神》アリシャ・ルーと、《戦律》サクヤ。

「ルーねーちゃん、サクヤねーちゃん………」

不敵に微笑んでくる二人の顔を見回しながら、レンは呆然の言葉を紡ぐ。その顔を直視しながら、カグラもまた口を開いた。

「行きましょう」

吐き出されたのは、短い言葉。

だけれども、その言葉は何よりも強くレンの心に響き渡った。

そして同時に差し出されてくる手。

それを、《終焉存在》と呼ばれる少年は────

「…………うん」

しっかりと握った。

ゆっくりと身体を反転させる。

その小さな背に、あまりにも大きなものを背負って。

両眼が見据えるのは、二人の妖精が迷い込んだ天空への階段。

全ての者達が放つ闘志という名の見えざる力が空中にスパークした時、レンは静かに言った。

「突撃」

聖戦の火蓋が落とされた。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ