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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
Standing
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頷いた闇妖精(インプ)はしかし、と続けた。

「分からなくなってきたのです。私が、本当に《人》になれているのかどうかを」

「そんなの知ーらない」

「え?」

地面に伏したまま、なおその存在感は衰える事を知らない紅衣の少年は、傷だらけの顔を億劫そうにカグラに向けた。

否、実際に苦しいのだろう。あれだけの戦い、元から弱っていたレンの身体が耐えられた訳はないのだ。

現在、レンの体には二重の意味で痛覚が働いている事だろう。

一つは、仮想世界方向からの痛み。

心意での攻撃は、システム上で規制されている痛覚制御(ペインアブゾーバ)を透過する。脚を斬られれば脚を斬られる痛みが、手を引っこ抜かれればそれだけの痛みが神経を苛む。

二つ目。

これは言わずもがな、現実世界からの痛みだ。衰弱しきった脳は、痛覚に痛みという形で警告を送る。

その二重の痛みが、レンを苛んでいるのだ。その痛みは尋常ではないだろう。

それでも、少年はカグラを見る。


常人ならば、一瞬でショック死するほどの激痛に襲われながらも、顔を歪めたりせずに。

見る。

「カグラは、《人》なんでしょ?なら《人》じゃん」

「私は………人……」

「人は……ううん。どんな生き物でも、自分をどう認識しているかで、簡単に何にでもなれるんだよ。それがたとえ、どれだけおかしな物でもね」

「………………………」

よっこらせ、と少年は立ち上がる。

空から降ってくる瓦礫も、あらかた降り終わったのか、地面に衝突するガラカラという衝撃音も聞こえなくなっていた。

クーがのそりと立ち、寄り添うように傍らにとどまる。

「これから………どうするおつもりですか?」

「さぁて、ね。僕は僕で勝手にやるさ。カグラはキリトにーちゃんの手伝いでもしに行ったら?マイを助け出すためには、今となってはあっちのほうが可能性高いわけだし」

「私が剣を捧げるのはあなただけです」

「強情だね〜」

「申し訳ありません」

律儀に頭を下げたカグラは、顔を上げた後で、それに、と言った。

「あなたにはまだ、やるべき事があるはずです」

「やるべきこと?」

はい、とカグラは縦に首を振る。力強く。

これ以上ないほどの意思を瞳に宿らせながら。

「今すぐキリトを追い、手助けをするのです。そして可能ならば、あなたも一緒に……」

「やめてよ」

ひび割れた声が、それを遮る。有無を言わさぬ声色で。

しかし、それを発する口許と目線は地面に深い影を生み出している。

「それは、ただの負け惜しみだ。そこまでして、僕は恥をさらさな」

い、と言おうとした時、レンは頬に熱と衝撃を感じた。


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