第三十五章
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することもできない」
「ですね」
上を見上げる。やはり途方も無い大きさである。顔があまりよく見えない程である。
「このままじゃ、ですね」
「さて、どうするかだが」
役は見上げ続けながら静かに言った。
「ここはな」
「何か策がありますか?」
「策か」
「ええ。何かありますか?」
「ないと言えば嘘になる」
役はまずはこう述べたのだった。
「ないと言えばな」
「それを聞いて安心しましたよ」
本郷は役の今の言葉を聞いてにやりと笑った。それはそのまま彼の本音であった。
「その言葉をね」
「安心してくれれば何よりだ」
「それでどういった策ですか?」
「とはいっても簡単なことだ」
今度は前置きが述べられた。簡単だというのだ。
「至極な」
「簡単なんですか」
「上にあがるだけだ」
それだというのである。
「今我々がいる場所はだ」
「海の中です。そういうことですか」
「その通りだ。陸にいるわけではない」
役はその上を見続けている。そこにはダゴンが相変わらずその異様な巨大そのものの目で彼等を見下ろしている。黒いガラスをそのままそこに入れた様な何の感情も見られないその目で。彼等を見下ろし続けているのだった。
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