1年目
春
春B〜私が存在する理由を〜
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。
「そういった人間の思いの塊が私たち幽霊、ってわけ。私は近所の子供たちが、あそこは幽霊部屋だ、って言ってくれてたから存在できた、って感じなのかな。だから、迷惑ではあったけど私が今ここに存在できるのもあの子たちのおかげだし、あの子供たちには感謝しなくちゃね。」
へー、と相槌を打つ。
「今は拓海が私を認識してくれているから、物も触れるし、ご飯も食べられるってこと。まぁ、私自身も幽霊になってから知ったんだけどさ。あ、でも壁くらいは通り抜けられるよ!」
そう言うと同時に「彼女」は床へと沈んでいく。なぜか腕を掲げ、親指を立てたまま。
―――あいる、びー、ばーっく…
……俺は毎回ネタに付き合ってやるほど寛大ではない。
でも、なるほど。そういうことなのか。
完全には納得できず、やんわりとした違和感を覚えたが、少しだけでも「彼女」のことを知ることができたのを嬉しく思い、そんなことは頭から消え去っていた。
だがそこで我に返る。
嬉しく……? これじゃまるで「彼女」のことが気になってるみたいじゃないか。
ないない、と笑い飛ばし、皿に残っていた最後のおかずを平らげる。
私が食べようと思ってたのに!、と横から、いや、正しく言うならば床から文句を言われた。
「あ、あとさ、気になってたことと言えば」
「ん?」
床から顔だけを出して不思議そうに首をかしげる。
「なんで最初に会った時泣いてたんだ?ほら、枕元に立ってた時さ。」
ドキッとした様子を見せた後、そんなのどうでもいいでしょ!と、顔を明後日の方向へと背け、言葉を濁そうとしているのがわかる。
人間、断られるとより気になるもので……。
「あーあ、残念。今日はコンビニのバイトだから廃棄になるデザートとかもらってこようと思ったのになぁ。教えてくれないんじゃ渡せないよなぁ。」
そう言いながら、煙草に火をつけ、目線を「彼女」の方へと向ける。
うぅ……、と声をあげ、しばらく沈黙が続いた後、「彼女」はゆっくりと口を開いた。
―――怖かったのよ……。
「え?」
「だから、怖かったの!夜寝るときはいつも少しだけ明かりつけるようにしてたから!それなのに拓海は真っ暗にして寝るじゃない。どうかしてるわ!」
なぜか逆切れされてしまった。幽霊が暗いところが苦手など初耳だ。ホラー作家は本当の幽霊に会ったことはないんだろうな、と思いを巡らせ、気づいた時には俺は笑ってしまっていた。
「彼女」といると俺の中の常識が180度変っていく。
何がおかしいのよ!?と、「彼女」はふくれっ面だが、そんな姿を見て俺はどこか微笑ましく感じていた。
ホラー作家のみなさん。本物の幽霊なんてこんなもんですよ。
そんな日常を俺はどこか楽しんで
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