第二部 文化祭
第46話 家族
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し、瞳がどうだと言われると、なんだか照れくさく感じた。
「お、俺としては、あまり嬉しくはないかな」
「えっ、どうして? 褒めてるのに」
「えーっと、やっぱりさ、その、どうせなら、かっこいいとか言われたいなって……好きな女の子にはなおさら、さ」
「キリト君……」
アスナは一瞬眼を見開くと、ぽふっ、と俺の肩に身を預けてきた。
「キリト君は、いつだってカッコいいよ。言うまでもないじゃない。君は、いつでもどこでも、わたしを助けにきてくれる、わたしの英雄……そうでしょ?」
思わぬ不意打ちにドギマギした俺は、思わずこくこくと何度も頷いた。
「普段はちょっぴり不器用さんに見えて、やる時はちゃんとやってくれる……それが君だよ」
俺は、アスナに向けて微笑んだ。どちらからともなく、二人の顔が近づき、そして──。
「パパ、ママ、なにやってるんですか?」
──そして、ユイに阻まれてしまった。
俺は硬直してしまったが、アスナはさっと動き、途中まで作られている砂の城の前に座り込んだ。
「な、なんでもないよ、ユイちゃん! さっ、は、早くお城完成させちゃおう」
「同じようなことをしている男女の二人組さんを、以前にも数回目撃したことがあると記憶しています。あれは何なのでしょう、パパ?」
「お、俺に訊く!? ……ええと、そのバカップ……じゃなくて仲よし男女二人組さんのことは知らないけど、さっきはただ、その〜……ア、アスナの前髪にゴミが飛んできたからさ、それを取ってただけだよ」
「パパ、嘘はいけませんよ。わたし、相手の話すことが嘘か本当かなんて、簡単に判っちゃうんですから。さあパパ、嘘を吐かずに、本当のことを教えてください」
「うっ……わ、悪いなアスナ。俺は逃げる!」
「あっ! ちょっ、キリトくーん!」
俺が白い砂浜を駆け抜け、ぐちゃぐちゃに乱す。
ユイがそのあとを追い掛けてくる。アスナがまた、その小さな背中を追い掛ける。
──なかなか楽しい、家族というものは。
とは言っても、俺とアスナはまだ、その……結婚もしていないのだが。
「あっ!」
ずってーん。ユイが盛大に転んだ。
「ユ、ユイちゃん! 大丈夫!?」
アスナが慌てて駆け寄る。するとユイは、アスナの制服の袖をむんずと掴み、天使のように穏やかに微笑んだ。
「ママ、さっきのは何だったんですか?」
「わっ、ユイちゃん、まだ疑問に思ってたの!?」
「わたしの探求心は、なかなか収まらないので」
「困った探求心だな」
俺のツッコミを軽くスルーなさった小さな美少女は、それからも幾度となく同じ質問を繰り返した。
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