第二部 文化祭
第46話 家族
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と出会うまで、ずっと……」
「ユイちゃん……」
思わず、俺とアスナは言葉を失ってしまう。
先に動いたのはアスナだった。
「……ユイちゃん」
優しく囁きながら、アスナがユイの細い体に腕を回す。
「ユイちゃんはもう、1人じゃないよ。わたしと、パパがいるし、リズや直葉ちゃん、シリカちゃん、まりちゃんだっているじゃない」
「ママ……」
「これからも、わたしたちはずーっと一緒だよ。寂しくないよ」
そう言って、ユイの頭を優しく撫でた。
「……はい、ママ。わたしは1人ではありません」
「うん! じゃあ、みんなでお砂遊びでもしましょうか!」
「……え。お、俺も?」
「当然。ユイちゃんも、パパと遊びたいわよねー?」
ユイは少し間を置いてから、口を開いた。
「……もちろん、パパとはいっぱい遊びたいです。でも、パパがやりたくないなら……わたしがわがままを言うわけにもいきませんし。わたしはパパの気持ちを優先したいので、どちらでも構いませんよ」
「ユイ……!」
なんだかウルッときた。わがままだったユイが、こんなにもよい子に。少しばかり寂しいような気もするが、それ以上にものすごく嬉しい。子供の成長を見守る親の気持ちって、こんな感じなのだろうか。
「ふふ、キリト君はすっかりユイちゃんのお父さんだねー」
「お父さん、か……パパはともかく、この年でお父さん呼ばわりされるのは変な感じだなぁ」
「クソ親父、よりマシでしょ?」
「ユイがそんなこと言い出したら、俺は自殺するかもな」
「怖いよ、キリト君」
アスナが苦笑いを浮かべた。
ユイは俺たちの一足先に、砂のお城作りに取り掛かっている。ふいに、アスナが言った。
「ね、キリト君」
「なに?」
「またここに来ようね。何度でも、三人一緒に」
朝日に照らされたアスナは、いつもの何倍も儚く、美しく見えた。
「ああ……必ず」
俺が言うと、アスナは優しく微笑み、自らを照らす朝日を見据えた。潮風に輝き揺れる栗色の髪を片手で押さえながら嘆息し、呟く。それは、あの日──こんな俺を好きだと言ってくれた日、夜空を見た時よりも、少し大人っぽかった。
「綺麗だね……」
「ああ、すごく、綺麗だ……」
俺もまた、同じような言葉しか返せない。自分の言葉のレパートリーの少なさに、我ながら溜め息が出る。
「君も、綺麗だよ」
そう言ったのは、驚くことに俺ではなくアスナだ。
「へっ? お、俺が?」
「うん。君の瞳は、無限に広がる果てない夜空みたい」
「へ、へえー……」
男としては、言われてあまり純粋な気持ちで喜ぶことの出来る言葉ではない。しか
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