暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第46話 家族
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「……リト君。キリト君ってばっ」

 アスナが俺の体を強く揺さぶる。
 あのあと俺とアスナ、そしてユイは、アルヴヘイムの家に来ていた。アスナが「三人で一緒にいたい」と言ったので、寮に帰ることはよしたのだ。
 しかしアルヴヘイムで迎える朝は、実に寒い。

「むにゃ……も、もうちょっと〜……寝る」

「キリト君?」

「寒い。布団から出たくない」

 俺が子供のように布団にくるまると、アスナに容赦なくひっぺがされた。

「わがまま言わないの! 今日は、ユイちゃんを連れて海に行くって約束でしょ」

「海? ……海!? ……絶対嫌だ。こんな寒いのに、海なんて行けるか」

「寝ボケてるの? 見に行くだけでしょ。別に泳ごうってわけじゃないわよ」

「嫌だ嫌だ嫌だ、ぜーったい嫌だ。今日は家で暖かく過ごそう。それが一番だ」

 その時。
 アスナの拳が、キィィンと音を立てて光り出した。

「わっ!?」

 情けない悲鳴を上げ、俺は飛び起きた。寸前まで横になっていたベッドが大分へこんでしまっている。

「……スキルで閃光1秒クッキング?」

「は?」

「うわっ! ご、ごめんアスナ、悪気はなかったんだ。なかったから、そのナイフを下ろして!」

 ──何故(なにゆえ)そこまで怒りますか!

 俺は慌てて外に逃げ出す。どうやらアスナの狙いはそこにあったらしく、アスナは手に握った凶器を収めると、にっこりと笑った。俺もひきつった笑みを浮かべる。

「ね、キリト君」

「な、なんでしょうアスナさま」

「…………」

 アスナが睨んでくる。俺はとりあえず言い直した。

「……なんだいアスナ」

「せっかく外に出たんだし、海行こっか」

「まだ夜間着です!」

「仕方ないなー。じゃあ、さっさと着替えてきてよね。遅かったら承知しないからねー」

 ──アスナ、俺……泣き虫になったよ。


* * *


「わあーっ」

 到着。アルヴヘイム内で有名なスカイ・ブルーの澄んだ海、真っ白な砂浜。しかも早朝の今、誰も、1人としていない。ユイの歓声はよく響き渡った。

「キリト君、気持ちいいねー」

 アスナが本当に気持ちよさそうに背伸びをする。

「わたし、海を見たのはこれが初めてです! 潮風が心地よく吹いていて……とっても、素敵です!」

「そうだね、ユイちゃん。人もいないし、こんな綺麗な場所を独占できちゃうなんて最高だよー」

 アスナが言うと、ユイは少し俯いた。次いで苦笑いを浮かべ、言う。

「でも……わたしは、誰もいない場所よりも、人がいっぱいで、みんな笑顔で楽しそうにしている場所の方が好きです。だってわたし、ずっと1人でしたから。パパやママ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ