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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第三十八話
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――イタリカ――

「……おぇ……」
「……済まん、大丈夫か?」

 イタリカで小休止する事になり、樹はふらふらとくろがね四起から降りて城壁のところで胃の中身を出していた。
 既に十分も出しており、胃の中は空である。それでも樹は胃液を出していた。
 その後ろではヒルダが申し訳なさそうに背中を擦っていた。

「中尉、水です」
「す、済まん……」

 樹は片瀬から水筒を受け取って水をゴクゴクと飲んで深い息を吐くのであった。

「……九六式(九六式艦上戦闘機)で慣れてるはずなんだが……これはキツいわ……」
「ほ、本当に済まない……」

 樹はそう呟くのが精一杯だった。イタリカには特地派遣軍から整備部隊、工兵部隊、補給部隊、歩兵部隊と合わせて二個大隊ほどがイタリカに駐屯していた。
 これは無理矢理の駐屯ではなく、イタリカからの要請であった。
 イタリカ当主のミュイ自身ではなく、側近達が会議をして決めたのだ。
 彼等は帝国と日本との取引所としてイタリカを利用しようとしていた。
 イタリカには多数の商人達が集まっておりイタリカは以前よりかは増して栄えていた。
 そのため、使節団は滞る事なく燃料の補給をして帝都へ出発するのであった。
 ちなみに運転は樹が代わったらしい。

「(ヒルダの奴、車のレースがあれば優勝しそうだな……)」
「(……何をやっているのだ私は……折角ロゥリィがいないのだから頑張ろうと思っていたのに……)」

 両者はそのように考えていた。なお、伊丹はレレイ達と共にロンデルという学問の都へ向かっていた。
 そのため、ヒルダは異様に燃えていた。

「……ロゥリィに負けてたまるかッ!!」
「うぉッ!? な、何だ急に……」
「す、済まん……」

 二人の仲が深まるかどうかはまだ分からないのであった。
 そして使節団一行と守備隊はアルヌスから三日目で帝国の帝都へと到着した。

「日本外交使節団とその護衛だ」
「はい、上から聞いております。私が案内します」

 門の守衛がそう言って馬に乗って先頭を行き出した。使節団はそれに従うように車をゆっくりと走らせる。
 程なく到着したのは正門を構えた大きな館だった。

「此方は翡翠宮と呼ばれています。此方を使って下さい」
「そうですか。ありがとうございます」

 代表で吉田が言うのであった。使節団が到着したのは皇城にいるピニャの耳に届いていた。

「そうか、来たか……」
「姫様、どちらへ?」
「翡翠宮だ。シャンディー、付いて参れ」

 ピニャはそう言って騎士団の一人を連れて翡翠宮へお出向くのであった。



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