反董卓の章
第5話 「君は『劉玄徳』…………そうだろ?」
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ではない、本物の戦い。
その事実に、皆が興奮しているのがわかる。
この内何人が死に、何人が生き残れるのだろう……
できれば一人も……失いたくはないのに。
(私は矛盾している)
戦いのない世の中を作りたい気持ち。
正しいことを為していきたい気持ち。
本来、それは相反しないことのはずなのに。
だが、両方を為そうとすると、必ず争いがどこからか湧いてくる。
それが賊だったり、野心を持つ人だったり、戦うことを望む人達によって……
それらから私を慕う人を、かけがえの無い仲間を、大切な人を守るために。
私は人を率いて戦うことになる。
そして……人が死ぬ。
だれも……死んでほしくないのに。
(戦わなければ…………私を慕う人が死ぬ。戦えば…………私達を殺そうとした人が死ぬ。どちらも人が…………死ぬんだ)
そして私は今もまた、人を助けるために、人を殺すために、人を率いろうとしている。
殺して、殺されて。
それで本当に…………世の中から戦いのない世の中が作れるというの?
(なんで…………戦うの? なんで争うの? みんな、誰もが生きていたいはずなのに。戦うことのない世界がほしいはずなのに)
私はまだ――――その答えが見つからない。
梁州という領地を持ち、州牧なんていう人の上に立つ立場になった今でも。
愛紗ちゃんや鈴々ちゃんと一緒に…………放浪していたあの頃と。
あの頃と……同じ。
ううん。
それ以上の矛盾を抱えて、私は今こうして人を……戦いへと向かわせようとしている。
本当に、こんな世の中を変えられるの?
私は…………
「…………ぅか。桃香!」
「……え?」
誰かに肩を揺すられる。
ふと見れば……そこにいた人。
その人は……
「大丈夫か? なんだかぼーっとしていたけど」
「あ…………ご主人、さま」
「ん? 少し顔が青いけど…………貧血か?」
私の顔を覗きこんで心配してくれる人。
北郷盾二――ご主人様。
私が初めて頼った異性であり…………一時頼りすぎて、全てを預けてしまった人。
そして……その人の抱える悲しみを知って。
初めて男性を護りたいと…………心から思った人。
私の…………一番、愛している人。
「もし体調が悪いなら朱里に見てもらおう。大事な時期だし、出発は一日二日遅れても――」
「だ、大丈夫。ただ、ちょっと……悲しかっただけだから」
私の言葉に、眉を寄せるご主人様。
「悲しい……?」
「……ご主人様。どうして人は、戦わなきゃならないのかな?」
「桃香……」
ご主人様は、一瞬だけ悲しい顔をする。
「……俺
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