反董卓の章
第5話 「君は『劉玄徳』…………そうだろ?」
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―― 関羽 side 漢中 ――
私は一体……なにをしているのだ。
自分の部屋の寝台の上で、膝を抱えてそう思う。
大事な王座の間での報告であったのに。
ご主人様の…………書簡の報告であるにも拘わらず。
私は怒りに身を委ね、ただ喚き散らしただけだった。
何故……何故、あんなことをしてしまったのだろうか。
……わかっている。
私はずっと、不満だったのだ。
大恩ある白蓮殿に対して、何もできない自分。
その裁量すらない、今の自分が…………情けなかった。
そして桃香様が決めたことだから……ご主人様がどうにもできないとおっしゃったから……
そう自分に言い聞かせて、納得出来ない心を押し込めていた。
それが…………
『董卓が謀反を起こして小帝陛下と宦官全てを殺害』
『洛陽で悪逆非道の執政を行っている』
『献帝陛下を傀儡に仕立てあげ……』
その言葉の悪意に。
私は…………冷静ではいられなくなっていた。
そして……
『その内容を……宗正である劉虞が認めた』
ギリッ
私の歯が、軋んだ音を上げる。
まただ。また、あやつだ。
また……私の恩義ある人が、一人の人物によって窮地に陥ろうとしている。
そやつこそ……
「劉、虞…………っ」
皇室の一人。
黄巾の乱の時に大陸の甘陵国の相に任命されたと聞いている。
荒廃の傷跡深い民を慰撫し、節倹を旨に指導した功績により、宗正に任じられた上で、幽州牧へと任ぜられた。
白蓮殿は、劉虞が赴任してきた時にかなり喜んだらしい。
皇室の一人にして、皇族にしては珍しいほどの仁君の元に仕えることができる。
そう……人に語っていたらしい。
だが……
その希望は、もろくも崩れ去った。
実権を得た劉虞は、隠していた野心をむき出しにして、幽州で非道の限りを行った。
白蓮殿にしてみれば……我が目を疑っただろう。
その劉虞が…………今度はもう一人。
私にとって恩義ある董卓殿に…………そして霞に。
許せなかった。
その怒りが………………溢れだしてしまった。
「わたし、は…………」
そう呟いた時。
ふいに、扉が叩かれる音がする。
「…………?」
不意に気がついた。
窓の外を見れば、すでに日が傾いている。
いつの間にか随分と時が経っていたらしい。
「……愛紗? いないのか?」
!?
ご、ご主人様!?
「あ、はい、います!」
思わず叫んでから、はっとした。
そうだ……私は、ご主人様に非礼を。
「あ、いたか…………返事がな
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